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ことぶきはしらだてまんざい寿柱立万歳
襲名披露狂言わだかっせんおんなまいづる和田合戦女舞鶴
ちかごろかわらのたてひき近頃河原の達引
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ひらがなせいすいきひらかな盛衰記
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Aプロ上演予定時間=約4時間
令和6年5月、シアター1010での文楽公演で大名跡が復活します。豊竹若太夫。初代は十八世紀初めに竹本座とともに今日の文楽の礎を築いた豊竹座の祖として活躍しました。このたび襲名披露する十一代目は昭和前期に豪快な語り口で知られた十代目の孫で、現代を代表する太夫の一人。いよいよ待望の登場です。
ことぶきはしらだてまんざい寿柱立万歳
家屋を立てる際初めて柱を立てる儀式〝柱立〟。太夫と才三が、門口で小鼓と扇を片手に柱立を披露し、家々の繁栄を祈りつつ、賑やかに舞います。襲名披露公演の幕開きにふさわしくおめでたい一幕です。
襲名披露狂言わだかっせんおんなまいづる和田合戦女舞鶴
将軍実朝の妹斎姫を討った荏柄平太の妻綱手と息子の公暁は、実朝の母尼公(北条政子)の館に匿われています。大罪人の妻子が匿われる館に、御家人の子供が武装して押し寄せます。幕閣に連なる武道に秀でた女性で館を守る板額は、抜け駆けした息子の市若丸と再会します。尼公は板額に、公暁こそ頼家の忘れ形見で、実朝の後継者にするために平太夫婦の子として密かに育てさせていたと告白します。尼公に公暁の命を助けるように懇願された板額は、我が子市若丸に対し一計を案じます。市若丸は、武士として誇り高い最期を遂げようとするのですが……。
初代若太夫が初演し、十代目も襲名披露狂言とした演目に、十一代目が満を持して挑む舞台にご期待ください。
ちかごろかわらのたてひき近頃河原の達引
自分を陥れようとした武士を殺めてしまった伝兵衛、恋仲の伝兵衛を案じるおしゅん、そんな二人が心中することを恐れるおしゅんの母や兄与次郎。京・堀川の貧家で、心温まる家族の思いやりや恋慕の情が交錯します。おしゅんの切々としたクドキ、おしゅん伝兵衛の門出の祝いに奏でられる猿廻しの曲と、印象的な場面が続きます。また、おしゅんと伝兵衛の二人が手を取り合って死出の旅立ちをする「道行涙の編笠」は34年ぶりの上演、この美しくも哀切な調べも聴きどころです。
Bプロ上演予定時間=約4時間30分
ひらがなせいすいきひらかな盛衰記
源平合戦を舞台に、勇名を馳せた木曾義仲の敗北とその残党の後日譚を中心とした時代物です。長らく上演が途絶えていた場面(楊枝屋の段は昭和63年以来)も交え、半蔵門の国立劇場でもコロナ禍の影響で実現出来なかった名作の本格上演をお楽しみください。
木曾義仲は朝敵となり、源義経率いる鎌倉勢の攻撃を受けます。義仲は正室の山吹御前と駒若丸を腰元お筆に託し、愛妾・巴御前と出陣します(義仲館の段)。粟津での戦で義仲は敗死し、山吹御前一行はお筆の父・鎌田隼人の貧家に身を隠します。そこへ鎌倉方が押し寄せますが、隼人の機転で切り抜けます。悲劇の中のユーモラスなやりとりが光る場面です(楊枝屋の段)。
山吹御前一行は大津の宿屋に一泊し、順礼の船頭権四郎一家と知り合います。そこへ落人狩りの武士が襲いかかります(大津宿屋の段)。混乱の中、駒若丸と取り違えられた権四郎の孫・槌松が殺されます。騒動で隼人と山吹御前は死に、駒若丸は行方不明、ひとり残された傷心のお筆が山吹御前の亡骸を笹に乗せて運ぶくだりは痛切な情趣が際立つ名場面です(笹引の段)。
摂津福島に戻った権四郎は取り違えた駒若丸を槌松と呼んで育てています。訪れたお筆は槌松の最期を伝え、駒若丸を戻すよう申し入れます。勝手な言い分に権四郎は憤慨し、駒若丸を孫の仇と意気込みますが、婿の松右衛門が止めます。松右衛門こそ義仲方の猛将・樋口次郎兼光でした。樋口は権四郎の婿に入り込み、主君を討った義経に復讐する機会を窺っていたのです。孫を殺されて怒る権四郎に情理を尽くし説く樋口、勇壮な中に悲しみを湛えた人情の機微が心を打つ名場面です(松右衛門内の段)。船頭として海に出た樋口に鎌倉の大軍が迫ります。樋口は権四郎に裏切られたと憤りますが、権四郎も駒若丸を救済すべく一計を案じていたのでした。戦乱に打ち続く悲劇に義理と情とが絡む美しい人間ドラマが光り、物語は大団円を迎えます(逆櫓の段)。