助成事業事例

芸術文化振興基金助成事業令和4年度助成事業事例集

福岡バリアフリーシアター2022

有限会社九州シネマ・アルチ(助成金額:600千円)

活動概要

九州シネマ・アルチは25年以上前から、“バリアフリーシアターエイムing(エイミング)”と協力してバリアフリー上映会を続けてきました。“エイムing”は福岡市のボランティア連絡協議会視覚障がい者部門を母体として、視覚障がい者のボランティアの一環として副音声=音声ガイドを作成して映画を楽しんでみてもらう活動を続けてきました。シネマ・アルチは“エイムing”の発足当初から技術・上映部門担当として協力して活動を続けてきました。また近年では聴覚障がい者のために日本語字幕を制作して、字幕・副音声を付けたバリアフリー上映会として取り組んでいます。

「バリアフリーシアター2022」の上映作品の内「ちむぐりさ」はエイムingで字幕と副音声を制作しました。「お終活」は副音声を制作して上映しました。

助成を受けて

エイムingとシネマ・アルチのバリアフリー上映は従来福岡市を中心に実施してきましたが、福岡県内各地の視覚・聴覚障がい者の方にもバリアフリーの映画を届けたいと思ってきました。しかし、採算面で中々実施に踏み切れませんでした。今回芸文振の助成制度があるということを知り、ぜひこの制度を使って福岡市以外の障がい者の方にバリアフリー映画を見てもらいたいと、今回の企画を実施しました。実施した4会場の内、田川市・八女市・宗像市ではバリアフリー上映は初めての企画で、障がい者の参加は思ったほど多くはなかったのですが、参加いただいた方たちからはぜひ続けてほしいという声が届きました。また、隣町の障がい者団体の方からは今度はうちでも実施してほしいという声もありました。

助成の意義

字幕付き上映は行政などでの主催上映でも要望が多いので、最近はずいぶん進んできました。20年ほど前には製作者の理解を得るのが大変で、なぜ日本映画に字幕が必要なのかを説明するに苦労しました。ましてや、目の不自由な方が映画を「見る」ということを理解してもらうのは大変でした。「障がい者機会均等法」などの施行などで、近年は製作者、行政など様々なところでバリアフリー上映についての理解が進んできましたが、副音声上映はまだまだ一般的にはなっていません。

また近年映画館ではUDcastでスマホで副音声を聞くことができるシステムが普及してきましたが、スマホを使いこなせない高齢者の障がい者にとってはまだまだハードルが高いのではないでしょうか。そのために私たちはFMラジオで副音声を聞いていただく方式を続けているのですが、そのためには発信機やラジオなどの機材が必要になり、映写技師とは別に副音声のオペレーターも必要で、上映自体が大掛かりになってしまいます。自主上映でバリアフリー上映を企画する場合には費用やスタッフの配置などで制約が出てきますが、その点でも今回の助成制度を利用することで助かっています。

障がい者にとってテレビやパソコンでの字幕機能や音声読み上げ機能などのツールの発達で、DVDやパソコン・スマホなどで個人で映像や映画を楽しむことは容易になりました。また全国の点字図書館で取り組んでいる”シネマデイジー“(映画の音源に場面解説の副音声=音声ガイドを付けた音声データ)の貸し出しなども普及してきました。エイムingも福岡の点字図書館に協力して年に数本の”シネマデイジー“の音源制作に取り組んでいます。しかし、私たちが取り組んでいる映画を健常者も障がい者も同じ場所で一緒に観るという「バリアフリー上映会」という場は、健常者と障がい者の相互理解としてもとても大切な場所ではないかと考えています。

今後の活動

申請期日が前年の10月、採択が3月末なので、バリアフリーシアターで上映する作品の選定に苦労しています。できるだけ新しい作品を見たいという要望がありますので、私たちもそれにこたえようとしていますが、なかなか一年先までの上映可能な作品を交渉するのが大変です。それで今年(2023年)は自前でバリアフリー映画祭2023を取り組みましたが、来年はできるだけ来年公開作品でバリアフリー可能な作品を見つけて、製作・配給会社などとの交渉を続けて2024年度は助成制度を活用したいと考えています。また県内各地での障がい者の方の要望に応えられるように各地域での上映も実施したいと思います。

有限会社九州シネマ・アルチ

  • 住所〒810-0003
    福岡市中央区春吉3-22-17協立ビル2階
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  • Webサイトhttp://cinema-arci.net