国立劇場伝統芸能伝承者養成所
学生のときに歌舞伎を観たのがきっかけでした。歌舞伎座の四階席で一番遠い場所でしたが、舞台と客席の両方が見渡せました。劇場全体が熱気に包まれ、一体となって盛り上っているのに圧倒されました。また、表舞台だけでなく、目に見えないところでも、大勢の人々が舞台を支えているのだろうと思いました。
幼い頃から音楽を聴いたり楽器を奏でるのは好きでしたが、歌舞伎の舞台で演奏される音楽に接してみて、とても魅力を感じました。自分も、舞台をつくる大勢の人々の一員になりたい。音楽の方面から歌舞伎の世界に飛び込んでみたいと思ったのです。
場面に即した演奏によって芝居の雰囲気を盛り上げる。そうすることで自分自身も、その芝居の世界に入りこんだ気になれる。日常とは全く別の世界を体験できるのは大きな魅力です。
研修中は毎日が驚きと発見の連続でした。師匠のお手本に涙してしまい、お稽古にならないなんてこともありました。
舞台に立つようになって役者さんを後ろから見るのが新鮮でした。見得を切ったとき、背中から放たれる強烈な印象は脳裏に焼き付き、毎日の刺激と活力となっています。
皆さんにとって、研修生に応募することは伝統芸能という、未知の世界への旅立ちのようなものかもしれません。希望もあれば不安もあるでしょう。しかし、勇気をもって踏み出せば、きっと新たな自分を発見することでしょう。
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