幼少の頃に歌舞伎を見た時から、舞台の煌びやかさと音楽の特殊性に興味がありました。ある時インターネットで研修制度があるのを知り、昔見た舞台に「声」で関わることが出来るのならと思い、歌舞伎音楽(竹本)研修に応募しました。
竹本の仕事は、義太夫狂言と言われる歌舞伎の演目で、主に状況・登場人物の心境を語るナレーターの様な存在です。一つの演目の中で老若男女、善悪、高貴な人から市井の人々まで、基本として一人の太夫と三味線弾きが演じ分けることになります。
そこには先人の工夫と技巧が、口伝として現在まで残っているわけですが、その伝統を継承し、また後の世代へと繋いで行くと考えると、大変責任のある仕事であると思われます。
とはいえ明確な答えがあるわけではないので、自分なりに考えて、答えを導きだすことも必要とされます。
しっかりとした伝統を修めつつ、余白を自分で色づけることが出来る、やりがいのある仕事だと思っています。
研修生時代、楽屋に詰めて先輩方のお手伝いをさせて頂くことになり、公演中は一月休みがないということを知りました。先輩方の「休みがあるほうがかえって体の調子が悪くなる」と仰っていたことが印象的でした。
竹本業界に入り、舞台に立たせていただくようになってからも勉強の毎日です。同じ演目でもやる場所が違えば、舞台の大きさや反響が変わり、そうと分かっていてもなかなか思うように出来ません。研修生時代に、先生方に教えていただいたことの難しさを舞台に立ってから改めて実感しました。
竹本のことに限らず、歌舞伎では、歴史的事件から伝説、または当時の町内事件簿まで、江戸時代の人々が感応した出来事が演目になっています。それはつまり、歌舞伎に限らず他方面でも戯曲化、読み物として作られ、現在まで伝わっています。
こうした江戸の残り香は、気を付けてみると、意外と近くに残されていたりするものです。歴史を感じて、江戸を身近に感じたら、そのことを芸に結び付けていく。日々の出会いを大切にしていきたいですね。
そして講師の方々は、皆さん最前線で活躍なさっている一流の方たちです。日々のお教えを大切に、少しずつでも近付ける様に頑張りましょう。
研修生活を一日一日大切に。
私もまだ研修を出て日が浅いので、皆さんに負けない様に精進致します。
お会いできる日を楽しみにしています。
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