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日本芸術文化振興会

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国立劇場等の現状と再整備について

  • 独立行政法人日本芸術文化振興会
  • 理事長 長谷川 眞理子


 平素は国立劇場をご愛顧いただき、誠にありがとうございます。
 さて、国立劇場は開場から60年近くがたち、老朽化が進むとともに、設備の在り方自体も時代に合わないものとなってきました。そこで、振興会では、安全で時代にあった施設・設備を整えるため、昨年10月末に、演芸場と伝統芸能情報館を含め、いったん閉場・閉館いたしました。その後、研究者の方々などからのご要望もあり、伝統芸能情報館図書室・視聴室は、再開しております。
 しかしながら、これまで振興会側からは、劇場の施設や設備がどれほど不具合であるのかや、ごく近いうちの再稼働がどれほど困難であるかなどについて、多くの皆様に納得いただけるような説明を十分にはできていなかったと思います。ここに心よりお詫び申し上げますとともに、改めて説明したいと存じます。

1.施設・設備の現状について
 国立劇場本館や演芸場は、建物自体だけでなく、舞台機構や空調などの設備の老朽化が深刻です。
 舞台機構では、廻り舞台や迫りが、本来止まるべき位置で止まらないなど、事故につながりかねない動作不良がときおり発生していました。5,6階建てのビルほどもある廻り舞台を支えるレールにはひびがはいっており、いつ動かなくなっても不思議ではない状態です。これらの装置も空調も、修理するための部品はすでに作られておらず、故障すれば再稼働させることはできません。水まわりの配管も古くなり、トイレなどの水があふれだすこともありました。
 また、2011年の東日本大震災の被害をふまえて建築基準法が改正され、天井脱落対策の規制が強化されました。しかし、大劇場、小劇場などの客席の天井は、国立劇場の再整備を計画していたため、未改善となっております。

2.建て替えでの再整備について
 再整備は、部分的な改修ではなく、全面的な建て替えで行います。
 舞台機構などの老朽化には抜本的な対策が必要です。楽屋、稽古場、研修施設の不足、そしてそれらがかかえる他の課題などを解決するためには、現在のこれら設備の配置を変更してスペースを確保せねばなりません。また、開場当時はバリアフリーの概念はありませんでしたし、座席が狭い、女子トイレが不足しているなどなど多くの問題があります。
 これらのすべてを解決するには、部分的な改修では間に合いません。たとえ部分改修でしのぐとしても、大掛かりな舞台機構の取り換えなど、全面建て替えに匹敵する事業費や工事期間が必要になると見こされます。そして、いずれは次の改築が必要になりますから、中長期のライフサイクルコストを考え、十分な検討を加えたうえで、建て替えが決定されました。

3.今後について
 本年6月に閣議決定された骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針2024)では、国が責任をもって国立劇場の再整備を行うとされました。そして、国立劇場再整備に関するプロジェクトチーム(※)において、これまでの整備計画を改定する方向性が示されました。
 今後は、政府の令和7年度の予算編成の中で適切に措置されるよう、関係各所と調整を進めてまいります。
(※)文部科学副大臣の主宰による、文部科学省、文化庁、独立行政法人日本芸術文化振興会、国土交通省、内閣官房で構成

 昨年10月末の閉場後は、様々な劇場や施設をお借りして主催公演や養成事業等を継続しています。一か所で長く公演を続けることが難しいため、会場の施設や立地が変わるなか、皆様にはご不便をおかけいたします。本格的な歌舞伎や文楽などをご覧いただくには十分でないことも大変恐縮に存じております。再開までには長い時間が必要となります。その間皆様にこれら各所での公演をできるだけ多くご鑑賞いただければ、公演収支の助けとなるとともに、制作、営業など私ども一同の大きな励みとなります。
 引き続き、工夫を重ねながら多ジャンルにわたる主催公演を企画、開催してまいりますので、今後とも変わらぬご贔屓を賜りますようお願い申し上げます。