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【千駄ヶ谷だより】国立能楽堂12月主催公演がまもなく発売です!
狂言 茶子味梅
唐人を夫にもつ日本人の妻は、近頃、夫が自分にはわからない唐の言葉を呟きながら泣くのを心配して、近所の物知りの男に相談します。物知りは妻に、夫が呟いている「日本人無心我唐妻恋」「チャサンバイ」「キサンバイ」は、「唐の妻が恋しい」「茶を飲もう」「酒を飲もう」という意味だと教えます。妻は大いに憤慨しますが、なだめられ、酒を用意して戻ることにします。家に帰ると、あいかわらず泣き暮れている夫に、妻は内心腹を立てつつ、ぐっとこらえて酒を勧めます。すると夫は…。
能 鳥追
薩摩国・日暮(ひぐらし)の里の領主・日暮殿は、訴訟のため京の都に滞在して、はや十年が過ぎていました。留守を預かる家臣の左近尉(さこのじょう)は、残された主の北の方と幼い息子・花若に、下人の仕事である鳥追をするよう強要し、母と子は理不尽を嘆きつつも随(したが)うしかありませんでした。
やがて帰郷した日暮殿は、笛や鼓を鳴らして鳥を追う舟を見かけます。よもやそれが自らの妻子とは思いもせず、近づいてみると、舟に乗っていたのは妻と子、そして左近尉。事情を知った日暮殿は左近尉を成敗しようとしますが、北の方のとりなしによって赦されるのでした。
宝生流以外の流儀でのタイトルは「鳥追舟(船)」。国立能楽堂主催公演で宝生流での上演は初となります。
狂言 察化
連歌の初心講(初心者の集まり)のため、都に住む伯父に宗匠(指導者)を頼むことにした主人。さっそく太郎冠者を迎えに差し向けますが、伯父の顔を知らない太郎冠者は、悪名高いすっぱ(騙り者)の察化を主人の伯父だと信じ込み、連れ帰ってしまいます。稀代のすっぱの登場に驚いた主人は、事を荒立てずにお引き取り願おうと、太郎冠者に自分の真似をして振る舞うように命じます。ところが、とことん真似を続ける太郎冠者に、事態はどんどん悪化して行き…。
能 通小町
比叡山の麓・八瀬(やせ)の僧のもとに、薪や木の実を届けに毎日通ってくる女がいます。素性を尋ねる僧に、女はとある和歌の下の句にことよせて「自らは名乗りません、薄が生い茂る市原野辺(いちはらのべ)に住む姥です」と言い残して姿を消してしまいました。
その言葉から、僧は女が小野小町の亡霊であろうと推察し、市原野へ赴き回向します。現れ出た小町の亡霊が仏戒を授かり成仏したいと請うと、そこに姿を現した深草少将の怨霊は、小町の成仏を妨げ、愛欲地獄に共に留まろうと引き止めます。僧に懺悔を勧められた少将の怨霊は、「百夜(ももよ)通ったら思いをかなえましょう」という小町の言葉を信じて毎日通い続け、あと一夜で願いがかなう九十九日目についに力尽き命を落とした無念を語り、やがて小町とともに成仏を遂げるのでした。
能・狂言を初めてご覧になる方にも親しみやすい作品を選んで、コンパクトに上演する入門向けの公演です。公演当日の上演前には、ロビーに能楽体験コーナーを設け、舞台では能楽師による簡単なプレトーク(解説)があります。
狂言 仏師
自宅にお堂を新築した田舎の男が、堂内に祀る仏像をあつらえようと都にやってきます。仏師にアテのない男は、「仏、買います。仏師、いませんか?」と大きな呼び声をあげながら通りを歩いていると、聞きつけたすっぱ(騙り者)が近づいてきました。そして、自分は腕の立つ仏師だと名乗り、明日までに仏像を作って納める約束を交わします。翌日、男が仏像を受け取りに来ると、すっぱは自ら面をかけて仏像になりすますのですが…。
能 西王母
賢帝として世に知られた中国・周の穆(ぼく)王。今日はその御遊(ぎょゆう)の席で、百官卿相(ひゃっかんけいしょう・役人や貴族)が集い、天上の楽園のような賑わいです。そこにどこからともなく若い女が現れ、三千年に一度だけ実を結ぶ桃が咲いたので、帝王に献上するためにやってきたと言います。その桃は仙女・西王母の園に実る不老長寿の妙薬で、女は自らが西王母の化身だと明かし、天に上がって行きました。
やがて、管絃を奏して待つ帝王の御前に、西王母が出現し、仙桃を捧げ、寿ぎの舞を舞います。いつしか時も過ぎ、西王母はふたたび天へと還っていくのでした。
狂言 川上
吉野に住む盲目の男が、目が見えるようになることを願って、霊験あらたかな川上のお地蔵さまに詣でます。参籠の甲斐あって霊夢をこうむった男は、眼が見えるようになりました。大喜びで家路につくと、心配して迎えにきた妻と道でばったり出会います。
実は、男の願いをかなえるにあたって、地蔵はひとつだけ条件を出していたのです。男は妻にそれを切り出すのですが…。
能 正尊
鎌倉から上洛した土佐坊(とさのぼう)正尊は、兄・頼朝が弟・義経を討つため都に送り込んだ刺客でした。兄の不興を被り堀川の邸に謹慎していた義経は、事態を察知して、正尊が逗留する宿に武蔵坊弁慶を遣わし、邸に召し出します。そこで正尊は、潔白の証明にと、義経を討つつもりがないことを起請文に書きあげ、神仏に誓いを立てて読み上げます。偽りの誓いと知りながら、義経は起請文の名文を褒め、酒宴を開き、静御前に舞を舞わせてもてなします。
正尊が帰った後、宿に差し向けた侍女から、正尊が夜討ちの準備をしていると報告を受けた義経と弁慶の一行は、武装して待ち受けます。夜が更けて、郎党を従えた正尊が責め込んできて激しい戦いとなります。正尊方は次々と討たれ、ついに正尊自身も生け捕りの身となるのでした。
起請文の小書(特殊演出)により、本来は読み上げない起請文を読み上げる場面が加わります。翔入は、後場に登場する正尊の郎党が大勢となり、派手な切組(きりくみ・切り合い)が見どころとなります。
【文/氷川まりこ(伝統文化ジャーナリスト)】
●12月主催公演発売日
- ・ 電話インターネット予約:11月10日(日)午前10時~
- ・ 窓口営業日:11月15日、23日、30日、12月4日、14日、20日、25日
国立能楽堂チケット売場窓口・自動発売機は国立能楽堂主催公演日のみの営業となります。
詳細は「国立能楽堂 チケット売場営業時間変更のお知らせ(2024.10.2)」をご覧ください。
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