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【千駄ヶ谷だより】国立能楽堂11月主催公演がまもなく発売です!
狂言 仁王
賭博で一文無しになり食い詰めた博奕打。国元を去ることを決めて、かねてから頼りにしていた知人の男に暇を告げにやってきました。事情を聞いた男は、博奕打を仁王像に仕立て、「仏が降った」という噂を流して一儲けしよう、と一計を案じます。うまくことが運んで、噂を信じた参詣人が仁王像を参拝しに、賽物(さいもつ)を持ってやってきますが…。
能 白楽天
唐を代表する詩人・白楽天(はくらくてん)が「日本の知恵がどれほどのものか確かめよ」という勅(ちょく)を受け、海を越えて松浦潟(まつらがた)へとやってきました。そこで出会った小舟で釣りをする老人は、不思議なことに白楽天の正体や来日の目的を言い当てます。白楽天が眼前の風景を即興で詩に詠むと、老人はすぐさまその心を和歌に詠み直してみせ、「日本では命あるものはみな、歌を詠むのだ」と教えます。さらに「和歌とともに舞う舞楽をお目にかけよう」と言い残し、姿を消しました。
やがて気品ある老体の住吉明神が現れ、厳かな舞を舞って白楽天に帰国をうながし、神々が次々と影向(ようごう)して神威を示します。すると、神風が起こり、白楽天が乗った船は唐土へと吹き戻されてしまいました。
鶯蛙の小書(特殊演出)により、中入で鶯の精と蛙の精が登場し、謡い舞います。
狂言 寝音曲
太郎冠者の謡が上手なことを知った主人は、太郎冠者を呼び出して、謡うように命じます。これからたびたび謡わされることになるのは面倒だと思った太郎冠者は「酒を飲み、妻の膝枕がなければ謡えない」と嘘をつきます。ならば酒を飲ませよう、自分の膝も貸そうと主人に言われ、仕方なく太郎冠者は主人の膝枕で謡い出しますが…。
能 蟬丸
延喜帝の第四皇子で琵琶の名手の蟬丸は、生まれつきの盲目ゆえ、逢坂山に捨て置かれることとなります。出家の姿となった蟬丸は、彼を琵琶の師と仰ぐ博雅三位(はくがのさんみ・源博雅)が訪ね来て調えた庵で、悲しみにくれながら琵琶を弾じます。するとそこに、髪が逆立った異様な姿で、長らく諸国を彷徨(さまよ)ってきた蟬丸の姉・逆髪(さかがみ)が、偶然、通りかかります。琵琶の音にひかれ再会した、狂乱の姉と盲目の弟。ふたりは手を取りあい、互いの身の不幸を嘆きます。やがて逆髪は、再びさすらいの身にもどり、蟬丸は逢坂山にひとりとどまるのでした。
本曲では通常、逆髪がシテ、蟬丸がツレですが、替之型の小書により両方がシテの扱いとなります。
◎ 水面に浮かぶ老木の花
11月と来年1月の二回に渡って、共通するテーマを描いた能を特集します。「水面に浮かぶ老木の花」のテーマのもとに、11月は、絶世の美男子と讃えられた公達をシテとする復曲能『実方』を取り上げます。
狂言 箕被
連歌にうつつを抜かす男は、とても良い発句(連歌のはじまりとなる五・七・五の句)ができたので、そのお披露目に連歌会を催したいと思い立ちます。ところが妻は「暮らしが貧しくてそれどころではない」とけんもほろろ。男は「借財をしてでも接待の料理をなんとかしてほしい」と食い下がりますが、愛想をつかした妻から離縁を切り出されます。そうして妻は「暇(いとま)のしるし(離縁の際に受け取る品)」として夫から渡された、使い古した箕を頭にかぶり、家を後にします。その後ろ姿を見送っていた夫が、思わず歌を詠みかけると…。
復曲能 実方
陸奥を行脚している西行は、歌人であり舞の名手であり、たぐい稀な美男子として名を馳せた藤原実方の墓を訪れます。西行が墓前で和歌を手向けていると、何処からともなく現れた老人が新古今和歌集を話題に話しかけてきました。そして賀茂の臨時祭(天皇主宰の賀茂神社の祭事)の舞手となった実方が、その美しさで人々の注目を集めた逸話を語り、姿を消してしまいました。
やがて、先ほどの老人が、本性の実方の亡霊となって現れ、舞を舞います。川の水面に映った自らの姿に、もはや光り輝いた若き日の面影は失せて、年老いて白髪となった現実が映し出されるのを見て、実方の亡霊はさらなる弔いを西行に頼み、虚空へと消え去るのでした。
長らく番外曲となっていましたが、観世流では平成五年に「能劇の座」において復曲初演した作品です。
◎ 古典の日記念 特集・源氏物語
『源氏物語』に描かれた王朝文化の雅な世界を、邦楽・雅楽・能など様々な芸能を通して、二日間にわたってご堪能いただきます。
一日目の邦楽は、箏の演奏で、組歌(複数の和歌を取り込んで一曲にまとめた歌)「空蝉」と、「澪標(みおつくし)」の巻にふれ住吉神社の風光と神徳を謡った「住吉」を演奏します。山田流箏曲は、江戸時代中期に誕生した流儀で、創始者の山田検校は河東節(かとうぶし)や謡曲(ようきょく)を参考に、箏の伴奏による物語性のある新しい歌曲を作曲しました。箏二面と三味線一挺の編成で、歌を伴って演奏するのを基本とします。
復曲能 空蝉
旅の途中、都・三条京極の中川のあたりにやって来た僧は、そこが『源氏物語』の「空蝉」にゆかりの土地であることに思いをはせ、空蝉と光源氏が詠み交わした歌を口ずさみます。すると、どこからともなくひとりの女が現れて、光源氏と空蝉の恋を物語り、消えてしまいました。
女が空蝉の霊だったのではないかと察した僧が、その魂を弔って読経をすると、経文に導かれるようにして空蝉の霊が姿を現します。空蝉の霊は、昔日を懐かしみながら舞を舞い、やがて夜明けとともに消えて行くのでした。
宝生流にのみ伝わるこの曲は、一時は廃曲とされていましたが、平成20年に約100年ぶりに復曲されました。国立能楽堂主催公演では初の上演となります。
◎ 古典の日記念 特集・源氏物語
『源氏物語』に描かれた雅な世界を、様々な芸能を通して、二日間に渡ってご堪能いただく企画。
二日目は、平安時代の王朝貴族たちに愛された雅楽を取り上げます。管絃は、歌や舞を伴わず、管楽器、弦楽器、打楽器の編成で合奏する音楽。催馬楽は、もともと国内各地に伝わっていた民謡や風俗歌を、管絃の楽器と笏拍子で伴奏しながら歌う歌謡ものです。「須磨」「若菜・上」の巻に関連する管絃や、「明石」の巻に登場する催馬楽をお届けします。
能 住吉詣
須磨に蟄居していた際に願掛けをした光源氏は、乳母子の惟光をはじめとする錚々(そうそう)たる供を従えて住吉神社へとお礼参りにやってきました。神主が祝詞をあげ、神楽を奏し、童や随身が今様(中世の流行歌)の歌と舞を奉り、参詣の後の酒宴が華やかに開かれます。そこに偶然、蟄居中に契りを結び姫を儲けた明石の上が、海路で参詣に訪れ、二人は邂逅を果たします。明石の上は舞を舞い、二人は和歌を贈り合って、過ぎし日に思いを馳せます。そうして、名残を惜しみつつ、明石の上は舟で、源氏は車で、それぞれの場所へと帰っていくのでした。
王朝絵巻さながらの華やかな場面が次々と続く展開のうちに、再会と別れを描く作品です。
【文/氷川まりこ(伝統文化ジャーナリスト)】
●11月主催公演発売日
- ・ 電話インターネット予約:10月10日(木)午前10時~
- ・ 窓口営業日:10月12日、18日、22日、26日、11月6日、9日、15日、23日、30日
国立能楽堂チケット売場窓口・自動発売機は国立能楽堂主催公演日のみの営業となります。
詳細は「国立能楽堂 チケット売場営業時間変更のお知らせ(2024.10.2)」をご覧ください。
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