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【千駄ヶ谷だより】国立能楽堂4月主催公演がまもなく発売です!
二九十八
いまだ妻を持てない男が、よい妻を授かりたいと願って清水寺に参籠します。するとその夜、「西門の一の階(きざはし・階段)に立った女を妻とせよ」という観世音菩薩の霊夢を蒙ります。男が西門に向かうと、お告げの通りそこに衣を被(かづ)いた女が立っていました。おっかなびっくり声をかけた男ですが、女が返した和歌から家のある辺りの見当をつけ、さらに詳しい場所を訊ねると、女は「にく」という謎の言葉を残して走り去ってしまい…。
嵐山
勅命で花の様子を確かめに嵐山にやって来た帝の臣下は、花陰を掃き清める花守の老人夫婦に出会います。老人は、この土地の桜は、花の名所であり仏法の聖地である吉野山から移されたので、吉野山の神が姿を現すのだと語ります。そして、自分たちこそがその神――木守(こもり)明神と勝手(かって)明神だと明かし、姿を消してしまいました。
やがて夜になり、満開の桜のもとに木守・勝手の両明神が姿を現して舞を舞うと、薫風がたちこめ、瑞雲がわき、金色に輝くなかから蔵王権現が出現します。木守・勝手・蔵王の三神は、桜に彩られた嵐山を駆け巡るように舞い、天下泰平の春を寿ぐのでした。
靱猿
京の都に長逗留している大名は、気晴らしに狩りでもしようかと、太郎冠者を供に遊山に出かけます。道すがら、猿を連れた猿曳きの男に出会った大名は、その毛並みの良さに目を留めて、靱(矢を入れて背負う筒状の道具)を毛皮で飾りたいので猿を譲ってくれと迫ります。男は、小さいころから芸を仕込んだ大事な猿をおいそれとは渡せないと断りますが、弓矢で脅されて、泣く泣く承知します。せめて自らの手でと、男が猿に因果を含めて打ち杖で殺めようとすると、猿はその杖を取って芸をはじめました。その無邪気な姿を見た大名は…。
替装束は大蔵流の小書(特殊演出)で、大名や猿の装束が常とは変化し、作品の運びも軽快なテンポとなります。
吉野静
兄・頼朝との不和により追っ手をかけられた源義経は、吉野山に身を隠していましたが、かくまってくれていた衆徒(しゅと・僧兵)たちの心変わりで山を後にしました。追っ手を防ぐよう命じられ、いまだ山中に留まっていた佐藤忠信は、義経を慕い吉野山へとやってきた義経の愛妾・静御前と再会します。そこに鐘が響き渡り、衆徒たちが義経追跡のため大講堂に集まるという情報が入ってきます。忠信は、衆徒を欺き義経を無事に落ち延びさせるため一計を案じるのでした。
やがて変装して大講堂に現れた忠信は、参詣者に紛れ込んで、頼朝と義経が和解したというデマを流し、義経主従がいかに強者揃いかを語ります。そこに静が現れ、神前に進み出て法楽の舞を舞います。衆徒たちの義経追討の気勢が鎮まったのを見届けると、静はひとり都へと帰っていくのでした。
能・狂言を初めてご覧になる方にも親しみやすい作品を選んで、コンパクトに上演する入門向けの公演です。公演当日の上演前には、ロビーに能楽体験コーナーを設け、舞台では能楽師による簡単なプレトーク(解説)があります。
鎌腹
鎌をくくりつけた棒を振りかざす妻に追いかけられ、逃げ惑う太郎。騒ぎを聞いて登場した仲裁人がわけを訊ねると、妻は「よその家の男たちはみなしっかり働いているのに、太郎は怠け者で家でだらだらとしてばかり、もう我慢の限界だ」と言うのです。なんとかとりなそうとする仲裁人の前で、ふたりはまた口論をはじめ、ついに太郎は、鎌と棒を取ってくれと仲裁人に頼みました。ようやく山に仕事に行くのかと思いきや、この場で腹を切ると言い出します。あきれた妻は勝手にしろと言い残し、仲裁人を連れて立ち去ってしまいました。さて、残された太郎は…。
土蜘蛛
武勇で知られる源頼光(みなもとのらいこう)は、このところ体調がすぐれず床に臥せっています。侍女の胡蝶が特別に調合した薬を届けても、ついつい弱音を漏らすほど。夜が更けて、怪しげな僧が頼光の前に姿を現すと、蜘蛛の糸を繰り出して襲い掛かってきました。頼光が枕元の刀で斬りつけると、怪僧は血を流しながら逃げ去って行きました。
この騒ぎに駆け付けた独武者(ひとりむしゃは)、軍勢を引き連れ、流れた血の跡を追って葛城山中の古い塚にたどり着きます。塚を突き崩すと中から土蜘蛛の精が現れて、千筋の糸を投げかけて激しい戦いを繰り広げます。けれど土蜘蛛の精はついに力尽き、討ち取られるのでした。
【文/氷川まりこ(伝統文化ジャーナリスト)】
●4月主催公演発売日
- ・ 電話インターネット予約:3月10日(日)午前10時~
- ・ 窓口販売:3月11日(月)午前10時~
0570-07-9900/03-3230-3000(一部IP電話等)
https://ticket.ntj.jac.go.jp/
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