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【千駄ヶ谷だより】国立能楽堂10月主催公演がまもなく発売です!
初めての能楽鑑賞にぴったりな国立能楽堂ショーケースや、国立能楽堂主催公演では20年ぶりの上演となる秘曲「檜垣」をご覧いただく特別企画公演と、芸術の秋に最適な公演をご用意して、皆様のご来場をお待ちしています。
呂蓮
旅の僧が宿を借りた先で、仏法の話をして後生の大切さを説くと、心打たれた宿主は出家を願い出ます。僧は宿主に、妻や親戚にも相談するよう勧めますが、出家についてはかねがね相談し了解を取ってあると言うので、髪を剃ってやります。衣も替えてすっかり出家の姿になった宿主は、せっかくなので法名もつけて欲しいと頼みます。そこで僧は、「蓮」の上に「いろは」をつけた名を提案し、呂蓮坊と名づけました。そこに宿主の女房が現れて、出家姿の夫を見て仰天! 怒りの矛先は僧に向かい…。
呉服
時の帝に仕える臣下が摂津国の住吉明神に参詣した帰り道、呉服(くれは)の里(現在の大阪府池田市の旧市街地)にさしかかりました。機織(はたお)りの音が聞こえてくる松原を見やると、二人の女性が糸を引き、機を織っています。名を尋ねると、かつて応神天皇の御代に呉国から渡来した呉服織(くれはとり)と漢服織(あやはとり)と名乗り、めでたい治世を寿いで現世にふたたび現れたのだと言います。そして、呉国から帰化した織女が呉服の里で綾の衣を織って帝に献上したという縁起や機織りにまつわる様々を語って、姿を消してしまいました。
夜が更けると、美しい衣に身を包んだ呉服織と漢服織が現れて、舞を舞い、綾を織りあげて帝に捧げ、栄える御代を寿ぐのでした。
宝生流では機織りの作物を出さないのが常ですが、作物出の小書(特殊演出)により大掛かりな機織りの作リ物が出されます。
居杭
居杭には、なにかにつけて目をかけてくれる何某という男がいます。ただ、いつも頭をポンポンと叩かれるので、それが嫌でたまりません。そこで清水の観音に願をかけると、頭巾を授かりました。今日も何某を訪ねて行くと、頭を叩かれるのかと思いきや、頭巾をかぶったとたん、居杭の姿は見えなくなってしまいました。何某が大慌てで居杭を探していると、算置(さんおき・算木(さんぎ)を用いる占い師)が通りかかったので、居杭の居所を探してもらうことにします。占いでは「すぐ近くにいる」と出るのですが、姿が見えないのをいいことに、居杭は悪戯心を起こし…。
高野物狂
常陸国の平松殿に仕える高師四郎(たかしのしろう)は、主君が亡くなった後、遺児・春満(しゅんみつ)を預かり養育しています。今日は主君の命日。墓前に参った四郎のもとに、「先祖供養のために出家する」と書かれた春満の置手紙が届きます。三世の契りといわれる主従でありながら、ひとり出家をするという春満。四郎は供に出家をするべく、行方知れずの春満を探して旅に出ます。
時が経ち、春満は、出家を願って訪れた高野山の僧のもとで預かりの身となっています。今日は、僧に伴われて高野山の名所・三鈷(さんこ)の松にやってきました。そこに、思いつめ、物狂いとなった四郎が何かの縁に導かれるように現れます。僧と問答し、思いが募った四郎は、歌舞音曲禁止の高野山の定めを忘れて舞い興じます。その様子を見ていた春満が声をかけ、主従は再会します。四郎は、ひとまず故郷にもどった後、あらためて二人して出家しようと言って、春満と共に帰郷するのでした。
能・狂言を初めてご覧になる方にも親しみやすい作品を選んで、コンパクトに上演する入門向けの公演です。公演当日の開演前には能舞台で簡単なプレトーク(解説)があります。また、公演の一週間前には、チケットご購入の方は無料で参加いただけるワークショップも開催します。
太刀奪
北野天満宮の神事に詣でようと北野に向かう主人と太郎冠者。通りがかりの男が見事な太刀をもっているのを羨む主人のため、太郎冠者はその太刀を奪おうとたくらむのですが、逆に主人の太刀を奪われてしまいます。ふたりは太刀を取り戻すべく男を待ち伏せし捕らえたのですが…。
紅葉狩
秋が深まる信濃国の戸隠山(とがくしやま)。狩りに訪れた平維茂(たいらのこれもち)は、紅葉の下で酒宴を張る上臈(じょうろう)の一行と出会い、宴に加わります。酔って眠り込んでしまった維茂の夢の中に八幡神(はちまんしん)の使いが現れて、女たちが鬼の化身であることを教えます。
やがて目を覚ました維茂に正体を露わにした鬼女が襲いかかってきます。けれど、夢の中で授かった神刀の力で、維茂は見事に鬼女を打ち伏せることができました。
菊の花
無断で旅に出た太郎冠者を叱るつもりの主人でしたが、京内参(きょううちまいり・京都見物)をしてきたと聞いて、許すかわりに都の様子を語るよう命じます。太郎冠者が語るには、祇園に向かう途中で大輪の菊の花を手折って頭に挿して歩いていると、身分の高い女性から歌を詠みかけられ、誘われるまま祇園の野遊びについて行くことになり…。
檜垣
肥後国の霊場・岩戸山で修行を積む僧の元に、毎日、閼伽(あか)の水(仏に備える水)を届ける老女がいました。ある日、僧が素性を訊ねると、「かつて太宰府の白川のほとりに暮らし、檜垣の女と呼ばれ『後撰集』にも詠まれた白拍子である」と名乗り、老女は姿を消してしまいました。
夜が更けて、僧が手向けの読経をしていると、先ほどの老女が現れ、弔いに感謝し、華やかだった若かりし日を振り返ります。そして、その美貌ゆえにもてはやされ、驕慢の罪で地獄に墜ちて、今も苦しんでいると訴えます。やがて老女は老残の舞姿を見せ、罪業の消滅を願うのでした。
老女物のなかでも『関寺小町』『姨捨』とともに最奥として重んぜられる「三老女」の一曲。国立能楽堂主催公演では二十年ぶりの上演です。
【文/氷川まりこ(伝統文化ジャーナリスト)】
●10月主催公演発売日
- ・ 電話インターネット予約:9月10日(日)午前10時~
- ・ 窓口販売:9月11日(月)午前10時~
0570-07-9900/03-3230-3000(一部IP電話等)
https://ticket.ntj.jac.go.jp/
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