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国立能楽堂

トピックス

【千駄ヶ谷だより】国立能楽堂8月主催公演がまもなく発売です!

 恒例の《国立能楽堂夏スペシャル》と題してお届けする8月の公演。
 面や装束を用いないで上演する「素の魅力」では、ダイレクトに伝わってくる演者の声や動きをお楽しみいただきます。
 「親子で楽しむ能の会」では、小さなお子様にもわかりやすい演目を選んで、冒頭に能楽師が鑑賞のポイントをお話します。お子様向けの字幕のご用意もあります。
 「蝋燭の灯りによる 特集・魂魄のゆくえ」は、揺らめく蝋燭の灯りのなかで、人間と亡者が交感する姿のさまざまをご覧いただく二公演。初日は「狂言と落語・講談」と題して他ジャンルとの競演をお楽しみください。

 摂津国芦屋の里を訪れた旅の僧は、海べりの御堂で一夜を明かすことになりました。そこに一人の男が朽ちた小舟に乗って現れ、自らを妖怪・鵺の亡魂だと明かして姿を消しました。
 その晩、鵺の魂を弔う僧の前に鵺の亡霊が現れて、国を傾け仏法を妨げようとしたため源頼政に討たれた顛末を語ります。討った頼政が名を上げた陰で、討たれた自らの亡骸はうち捨てられ淀川を漂い、闇に葬られた口惜しさ。鵺は、今なおさまよう魂の苦しみを語り、救済を願いながら闇の底へと消えてゆくのでした。

安達原

 廻国巡礼をする熊野那智の山伏・祐慶(ゆうけい)とその一行が奥州の安達原にさしかかり、野中にある一軒の家に宿を借りました。ひとり暮らしだというその家の女は、祐慶の求めに応じて賤女(しずのめ)の営みである糸繰りのさまを見せてもてなします。深夜になると、女は、決して閨(ねや・寝室)は開けないようにと言い残して、薪を採るために家を出て行きました。女の言葉が気になって仕方ない一行の能力(のうりき・従者)は、約束を破って閨を覗いてしまいます。するとそこには累々たる死骸の山が! 女の正体が安達原の鬼女だと悟り一目散に逃げ出した一行。本性を現して追いかける鬼女。対決の末、山伏の験力(げんりき)で調伏(ちょうぶく)された鬼女は、深い闇へと消えていくのでした。
 後シテ(後場の主人公)は、白頭(はくとう)の小書(特殊演出)により、髪の被り物が常の赤頭(あかがしら)から白頭(しろがしら)に変わります。古くからこの地に棲み続ける年老いた鬼として、位が重くなる演出です。

講談・番町皿屋敷

 旗本・青山主膳(あおやましゅぜん)の邸に仕える腰元・お菊は、罠にはめられて、十客揃いの家宝の皿を紛失した濡れ衣を着せられてしまいます。抵抗空しく井戸に投げ込まれて命を奪われたお菊は、幽霊となって夜な夜な現れ…。
 おなじみの怪談を、人間国宝・神田松鯉が熱く読み聞かせます。

落語・野ざらし

 昨夜、長屋の隣人を訪ねてきた美女のことが気になって仕方ない八五郎。誰なのかたずねたところ、隣人は「釣りの帰りに川原で見つけた野ざらしの髑髏(どくろ)を回向したら、美しい女性の霊がお礼に来た」と答えます。あれほどの美人、幽霊でもいいから会いたい! と、釣り道具を借りて骨を探しに川原へと向かった八五郎ですが…。
 古典落語を得意とする柳家さん喬の怪談噺です。

武悪

 病気を理由に長らく出仕を怠っている召し使いの武悪。堪忍袋の緒が切れた主人は、太郎冠者を呼び出し、武悪を成敗してくるよう命じます。太郎冠者は武悪の家を訪ねたものの、どうしても討つことができず、主人に内緒で武悪の命を助け逃がしてやりました。もどった太郎冠者から「武悪を討った」と報告を受けた主人は、太郎冠者を連れて東山へ出かけることにします。一方、命拾いをした武悪は、お礼参りに清水の観音へ詣でます。すると、清水に近い葬送の地・鳥辺野で両者がばったり出合ってしまいました。太郎冠者のとっさの機転で、武悪は幽霊の真似をすることになりますが…。

八尾

 ここは、あの世の入口。死後の行く先の分かれ道・六道の辻で、亡者となった河内国八尾の里の男がひと休みしています。そこに閻魔大王がやってきて、「近頃は信心深くなった人間がみな極楽に行ってしまい地獄が飢饉状態だ」と嘆き、自ら罪人を責めて地獄に落とすことにしたと言います。傍らの男に気づいた閻魔大王が声をかけると、男は「八尾の地蔵が閻魔大王に宛てた文だ」と言って書状を差し出します。さて、そこにはどんな地蔵からのメッセージが書かれいるのでしょうか?

楊貴妃

 寵妃・楊貴妃の死を悼いたむ唐土(中国)の玄宗皇帝の命を受けて、方士(ほうし・道教の仙術師)が楊貴妃の魂魄(こんぱく)のありかをたずねて蓬莱宮(ほうらいきゅう)へとたどりつきます。方士と対面し、皇帝の嘆きの深さを知った楊貴妃は、皇帝との昔日を懐かしみ愁いに沈みます。方士と会った証として形見のかんざしを渡し、皇帝と交わした秘密の言葉を明かして、楊貴妃は、去り行く方士をひとり寂しく見送るのでした。
 玉簾の小書(特殊演出)は、蓬莱宮の作リ物に多数の鬘帯を垂らして帳に見立て、厳かな華やかさを加えた演出です。

【文/氷川まりこ(伝統文化ジャーナリスト)】

 
●8月主催公演発売日
  • ・ 電話インターネット予約:7月10日(月)午前10時~
  • ・ 窓口販売:7月11日(火)午前10時~
  国立劇場チケットセンター(午前10時~午後6時)
  0570-07-9900/03-3230-3000(一部IP電話等)
  https://ticket.ntj.jac.go.jp/