トピックス
ユネスコ無形文化遺産「人形浄瑠璃 文楽」が世界へ――国立劇場制作の初のアメリカ公演を行います!
300年を超える歴史の中で洗練を重ねてきた、日本を代表する伝統芸能の1つである「人形浄瑠璃 文楽」が、この秋、国立劇場による制作では初めてアメリカを巡ります。首都ワシントンD.C.、世界の経済・演劇の都ニューヨーク、ハリウッドを擁するエンターテインメントの中心地ロサンゼルスなど計5都市で公演を行い、太夫の語りと三味線による義太夫節の繊細かつ迫力ある響きと、三人遣いによる人形の自在な演技が織りなす文楽の舞台を、アメリカのお客様にお楽しみいただきます。
本公演では、文楽の中でも屈指の名作、近松門左衛門『曾根崎心中』から「天神森の段」と、『伊達娘恋緋鹿子』から「火の見櫓の段」を上演します。現代まで息づく、日本が誇る優れたステージパフォーマンスをご覧いただくことで、文楽の多彩なレパートリーや技芸がもたらす感動を、本場日本に来て堪能したいと思っていただける契機となることを目指します。
アメリカ5都市巡回公演を通じた日本文化の発信
今回のアメリカ公演における5都市への巡回は、開催地の一つであるニューヨークのジャパン・ソサエティーの尽力によって実現しました。また本公演は、令和6年度日本博2.0 事業(委託型)の一環として、日本の文化を海外に発信する役目を担います。
文楽はオペラやミュージカルのように、芝居とともに音楽を同時に楽しめる演劇であり、子供向け人形劇ではなく、人生の機微をも表現する大人のための舞台芸術です。その洗練された芸術性は、まだ文楽をご覧になっていない海外の方々にとっては驚くべきものであると言えます。インターネットによりボーダーレスな情報の発信ができる現代だからこそ、地域の異なるアメリカの複数の都市で、1人でも多くの方の劇場での観劇体験を通じて、文楽の魅力をライブで感じ取っていただくことを目指します。また、公演では実演を交えて文楽を紹介する解説も上演するほか、一般の方が実際に人形を遣う「体験セッション」や、ニューヨークのジャパン・ソサエティー・ギャラリーで開催される展覧会”Bunraku Backstage”では、大阪・国立文楽劇場所蔵の文楽人形、衣裳、小道具などが展示会の一部として展示されます。
さらに、今回の『曾根崎心中』は、舞台の背景に『となりのトトロ』、『もののけ姫』、『この世界の片隅に』等の背景美術を手がけた男鹿和雄氏の原画によるアニメーション映像を用います。日本発のアニメーションはすでに世界的に高い評価を得ており、世界中に多くのアニメファンがいます。伝統的な舞台芸術の文楽とアニメーション技術の融合が海外の方にもたらすインパクトや、アニメーションそのものへの関心から伝統芸能への興味を生み出すという効果も見込まれます。
これらを通じ、アメリカの皆様に文楽をより身近に感じていただき、2025年の大阪・関西万博に向けて、日本で文楽のリアルな舞台を楽しみたい、という機運の高まりにつながることを期待しています。
東京における《BUNRAKU 1st SESSION》の成果
2024年3月には、有楽町よみうりホールで文楽入門公演《BUNRAKU 1st SESSION》を開催。文楽の出演者を交えた解説と、本公演と同様の形で『曾根崎心中』の「天神森の段」を上演しました。初心者向けの解説と合わせて60分というコンパクトな上演形態で、英語のパンフレット配布や英語オーディオガイドのレンタルも行い、訪日外国人を中心に、文楽未体験の日本人にも多くご来場いただきました。また、今回の文楽とアニメーションのコラボレーションを実現するためにクラウドファンディングを実施し、400名を超える方々に、総額900万円以上のご支援をいただきました。今回のツアーが、ご支援をお寄せいただいた方々のご期待に応えられるものとなるよう制作を進めてまいります。
写真:『曽根崎心中』(BUNRAKU 1st SESSIONより) 撮影:小川知子
【演目・出演者・スタッフ】
『伊達娘恋緋鹿子』火の見櫓の段
解説
『曾根崎心中』天神森の段
近松門左衛門=原作 野澤松之輔=脚色・作曲 澤村龍之介=振付
映像監修=桐竹勘十郎 映像美術=男鹿和雄 映像制作=山田晋平 映像制作協力=でほぎゃらりー
豊竹藤太夫・豊竹芳穂太夫・豊竹咲寿太夫
鶴澤清志郎・鶴澤寛太郎・鶴澤清允
吉田玉助・吉田簑紫郎・吉田簑太郎・桐竹紋吉・桐竹勘介・吉田玉延・吉田玉征・豊松清之助
【スケジュール・会場】
オーガナイズ:ジャパン・ソサエティー(ニューヨーク)
5都市9公演
①9月28日(土)1回 ロサンゼルス市(カリフォルニア州) 日米文化会館 Aratani Theatre |
②10月1日(火)、1回 フェアフィールド市(コネチカット州) フェアフィールド大学 Aloysius P. Kelley, S.J. Theatre |
③10月3日(木)~5日(土)、4回 ニューヨーク市(ニューヨーク州) ジャパン・ソサエティー Lila Acheson Wallace Auditorium |
④10月8日(火)~9日(水)、2回 ワシントンD.C. ケネディ・センター・フォー・パフォーミング・アーツ Terrace Theater |
⑤10月12日(土)、1回 ヒューストン市(テキサス州) ヒューストン日米協会 The Jeannette & L.M.George Theatre(予定) |
【特別協力・協賛】
本公演の実施にあたり、ANAホールディングス株式会社、キッコーマン株式会社、サントリーホールディングス株式会社の皆様より多大なるご協力を頂戴しています。
〔特別協力〕
ANAホールディングス株式会社 様
〔協賛〕
キッコーマン株式会社 様 | サントリーホールディングス株式会社 様 |
ジャパン・ソサエティーについて
1907年(明治40年)にニューヨークに設立された米国の民間非営利団体で、個人・法人・財団からの支援・協力のもと、日本の芸術と文化、公共政策、ビジネス、教育における革新的事業を展開している全米随一の規模を誇る日米交流団体です。年間200を超えるプログラムを、マンハッタン東47丁目の本部ビルを拠点に一般に向けて提供しています。
Copyright (C) Japan Arts Council, All rights reserved.