歌舞伎公演ニュース

2024年9月3日

【9月歌舞伎公演】

『夏祭浪花鑑』好評上演中
、25日(水)まで!

(舞台写真あり)

 初台・新国立劇場中劇場で上演中の9月歌舞伎公演。
 今年1月の初春歌舞伎公演以来、2度目の新国立劇場中劇場での開催です。
 今回は、客席内に花道を設け、新国立劇場ならではの中央部に張り出した舞台など、お客様と距離の近い、臨場感のある芝居をお楽しみいただいています。

 また、《歌舞伎名作入門》と題して、歌舞伎の名作を分かりやすいご案内付きでご鑑賞いただきます。
 令和3年から始まった本企画も4回目を迎え、初めて歌舞伎を観劇される方から愛好家の方まで名作の醍醐味をご堪能いただけます。

 今回は、夏の大坂で義理のために懸命に働く人々を描く名作『夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)』を上演しています。
 まだまだ残暑厳しい9月、初日の幕が開きました!

 舞台写真とともに、公演の魅力をご紹介します。

◆◆◆

 本編の前には、「入門『夏祭浪花鑑』をたのしむ」と題した片岡亀蔵によるご案内で作中の世界へお客様をいざないます。作品の背景や人物関係など、作品の魅力をわかりやすくお伝えします。


入門『夏祭浪花鑑』をたのしむ
(片岡亀蔵)

◆◆◆

 続いて、『夏祭浪花鑑』の上演です。
 喧嘩で人を傷つけた罪で投獄されている団七九郎兵衛が玉島兵太夫の情けで出牢することとなり、団七の女房お梶(澤村宗之助)が倅の市松を連れて、団七と旧知の仲である老俠客釣船三婦(市川男女蔵)とともに迎えにやってきました。


序幕「住吉鳥居前の場」
[左より]団七女房お梶(澤村宗之助)、釣船三婦(市川男女蔵)ほか

 神社へ参詣に行ったお梶と市松を待ちながら三婦が休んでいたところに、大坂へ向かう玉島磯之丞(市川男寅)が駕籠に乗ってやって来ました。駕籠舁が磯之丞に金をせびりますが、三婦は、その場を収めます。
 磯之丞が団七夫婦の恩人の子息だと知った三婦は、磯之丞をこれから行く茶屋へ先に向かわせます。
 ほどなくして、縄で縛られた団七(坂東彦三郎)が役人堤藤内(中村松江)に連れられ、やって来ました。団七との再会を喜ぶ三婦は持参した着替えを渡して、身なりを整えるように髪結床の下剃三吉(中村鷹之資)に頼み、自身も茶屋へ向かいます。


序幕「住吉鳥居前の場」
[左より]団七九郎兵衛(坂東彦三郎)、
役人堤藤内(中村松江)ほか


序幕「住吉鳥居前の場」
[左より]下剃三吉(中村鷹之資)、釣船三婦(市川男女蔵)

 すると恋人の磯之丞を追い、傾城琴浦(中村玉太郎)がやって来ましたが、琴浦に横恋慕する大鳥佐賀右衛門(片岡松之助)にさらわれそうになります。
 そこへ身なりを整えた団七が現れ、琴浦を救います。琴浦に茶屋で磯之丞が待っている旨を伝え、先に行かせた団七は、なおも琴浦を追いかけようとする佐賀右衛門を止めて追い払います。
 牢から出てきたばかりで髭も伸びきっていた団七が、さっぱりと男っぷりを上げて再び登場する姿にご注目ください。


序幕「住吉鳥居前の場」
[左より]団七九郎兵衛(坂東彦三郎)、大鳥佐賀右衛門(片岡松之助)

 急ぎ琴浦を追いかけようとする団七のもとへ、佐賀右衛門に雇われた先ほどの駕籠舁と、二人の助太刀を頼まれた一寸徳兵衛(坂東亀蔵)が現れました。駕籠舁二人を軽くあしらう団七に、喧嘩をしかける一寸徳兵衛。
 両者は高札を持ち、気迫ある「達引」を繰り広げます。歌舞伎ならではの立廻りを通じて、俠客2人の意地がぶつかり合います。


序幕「住吉鳥居前の場」
[左より]団七九郎兵衛(坂東彦三郎)、一寸徳兵衛(坂東亀蔵)

 参詣を終えて市松とともに戻ったお梶は、辻看板を持って団七と徳兵衛の仲裁に入ります。お梶は団七の喧嘩の相手が、以前に恩を与えた徳兵衛であることに気付きます。また、話をするうちに団七夫婦と徳兵衛は玉島家に恩のあるもの同士であることを知ります。
 団七と徳兵衛はお互いの着物の袖を交換して義兄弟の契りを交わし、ともに磯之丞に尽くすことを誓います。


序幕「住吉鳥居前の場」
[左より]一寸徳兵衛(坂東亀蔵)、団七女房お梶(澤村宗之助)、
団七九郎兵衛(坂東彦三郎)

 団七の世話で道具屋の手代として働いていた磯之丞でしたが、五十両を騙し取られ、また人を斬ってしまったために、琴浦とともに三婦の家に匿われています。
 今日は高津宮の宵宮です。軒先に飾られた祭り提灯や、聞こえてくる祭り囃子の響きからは、祭りの情緒を色濃く感じることができます。そのような三婦の家では、道具屋の娘と仲睦まじくなった磯之丞を琴浦が責めていますが、三婦の女房おつぎ(中村歌女之丞)がそれをなだめています。


二幕目「釣船三婦内の場」
[左より]傾城琴浦(中村玉太郎)、玉島磯之丞(市川男寅)

 家に帰ってきた三婦がひと休みしていると、徳兵衛の女房のお辰(片岡孝太郎)がやって来ます。お辰は、徳兵衛に先立って国許の備中玉島(現在の岡山県倉敷市)に帰るため、挨拶に立ち寄ったのでした。


二幕目「釣船三婦内の場」
[左より]徳兵衛女房お辰(片岡孝太郎)

 おつぎが、磯之丞を一緒に玉島へ連れて行ってほしいと切り出すと、お辰は即座に引き受けます。しかし、磯之丞を若くて美しいお辰に預けることで、二人の仲に間違いあっては……と三婦は懸念します。するとお辰は突然、火鉢で熱せられていた鉄の棒を自分の顔に押し当てます。火傷の痛みをこらえてお辰は、顔にこんな傷がつけば三婦の心配もなくなるだろうと言います。男勝りの意気地を見せるお辰の姿が鮮烈です。お辰の覚悟に感じ入り、三婦は磯之丞をお辰に託すことにするのでした。


二幕目「釣船三婦内の場」
[左より]徳兵衛女房お辰(片岡孝太郎)、釣船三婦(市川男女蔵)

 三婦が念仏を唱えているところへ、大鳥佐賀右衛門の手下、こっぱの権となまこの八が琴浦を渡せと乗り込んできます。喧嘩を断っていた三婦でしたが堪忍袋の緒が切れて数珠を断ち切って投げ飛ばし、二人を放り出すと、佐賀右衛門と話をつけると出て行くのでした。
 そこへ、団七の舅の義平次がやって来ます。ここは危ないので他の場所へ移るよう団七に頼まれたと偽り、琴浦を駕籠で連れ出すことに成功します。


二幕目「釣船三婦内の場」
[左より]三河屋義平次(片岡亀蔵)、傾城琴浦(中村玉太郎)、
三婦女房おつぎ(中村歌女之丞)ほか

 入れ替わりに、団七と徳兵衛に諫められながら、三婦が戻って来ました。おつぎから琴浦の一件を聞いた団七は驚きます。佐賀右衛門に通じて金儲けを、という舅の企みと察し、すぐさま、その後を追いかけるのでした。団七の焦りと緊張感を表すかのような囃子が舞台を盛り上げます。


二幕目「釣船三婦内の場」
[左より]団七九郎兵衛(坂東彦三郎)、三婦女房おつぎ(中村歌女之丞)、
釣船三婦(市川男女蔵)、一寸徳兵衛(坂東亀蔵)


二幕目「釣船三婦内の場」
団七九郎兵衛(坂東彦三郎)

 三婦の家から遠くない長町の裏手、祭り囃子がかすかに聞こえている中、義平次と、琴浦を乗せた駕籠は先を急ぎます。そこへ必死に声を掛けながら、団七が追いつきます。
 行く手を遮られた義平次は、これまでの恩を並べ立て団七をなじります。じっと耐える団七は、三十両で駕籠を戻すよう持ち掛けると、義平次はそれを承知します。
 ところが駕籠が戻った後、団七が懐から出したのは金ではなく小石でした。憤った義平次は団七を打ち据え、雪駄でその眉間を割ります。耐えかねた団七と義平次がもみ合ううち、団七ははずみで義平次の肩を刀で斬ってしまいます。


二幕目「長町裏の場」
[左より]団七九郎兵衛(坂東彦三郎)、三河屋義平次(片岡亀蔵)


二幕目「長町裏の場」
団七九郎兵衛(坂東彦三郎)ほか

 舅を斬れば死罪は逃れられませんが、団七は覚悟を決めて義平次に斬りかかります。泥にまみれ、二人はもがき合いますが……。団七と義平次の運命はいかに!
 劇的に展開する物語の全容は、ぜひ劇場でお楽しみください。

◆◆◆

 大坂の暑い夏を舞台に、意気地と義理を重んじる人々の鮮烈な生きざまが描かれる名作『夏祭浪花鑑』。初役が多い、溌剌とした俳優陣による熱気あふれる芝居にご期待ください!

 同じく新国立劇場小劇場にて、9月7日(土)より開催の9月文楽鑑賞教室でも『夏祭浪花鑑』を上演いたします。
 『夏祭浪花鑑』を通して歌舞伎と文楽の両方の違いをお楽しみいただける競演にも、是非ご注目ください。

 皆様のご来場をお待ちしております。



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