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36年ぶりの上演!「楊枝屋の段」(その2)
5年ぶりの二部制で実現した『ひらかな盛衰記』の本格上演。その中でポイントとなる場面の一つが、昭和63年(1988)以来、36年ぶりの上演となる「楊枝屋の段」です。その詳しい物語は劇場でお楽しみいただくとして、この段で笑いを誘う印象的な家主六兵衛と猿を遣うのが吉田勘市と吉田玉彦です。なお、久々の上演にあたり、前回の際の手がかりが少ない部分については、桐竹勘十郎と吉田玉也が新たに六兵衛と猿の動きを作りました。
(左より)吉田勘市・吉田玉彦
【吉田勘市】
ー前回の上演は昭和63年でした。
勘市:私が技芸員となり、初舞台を踏んだのが昭和60年4月で、その時に国立文楽劇場で『ひらかな盛衰記』の「松右衛門内より逆櫓の段」が上演され、非常に骨太な時代物というイメージが強かったのですが、昭和63年の「楊枝屋の段」の上演の時は、なんとも力の抜けた面白い演目だなぁ、と思ったのを覚えております。
ー実際に舞台で遣われて、ご感想はいかがですか?
勘市:この役がつきました時に、今の家主と猿の演出の大部分は昭和63年上演時に勘十郎さんと玉也さんがこしらえたんやでぇ、と聞きましたが、床本の通りだと別段何もせずとも終わりそうなところを、ふくらませて「クスッ」と笑わせるような(たとえば家主の動きを猿が猿真似するなど)動きを入れ、実際に舞台でもお客様の反応があり、嬉しく感じています。
ー12月に続いてのシアター1010の舞台、いかがですか?
勘市:客席のサイズ的にも非常に文楽というお芝居に向いているのではないでしょうか、また駅近でもあり、そこも便利で良い劇場だと思っております。
―お客様に一言お願いします。
勘市:今月はAプロで襲名披露が行われていることもあり、多くのお客様においでいただいておりますが、Bプロの『ひらかな盛衰記』も「義仲館の段」「楊枝屋の段」という珍しい場面もございますので是非ご観劇ください。19日からは昼11時開演の部になりますのでよろしくお願いいたします。
【吉田玉彦】
ー「楊枝屋の段」での猿を遣うにあたり、注意しているところ、工夫しているところはありますか?
玉彦: 毎日、少しずつ動きに工夫をつけたり、お客様が飽きないように、ずっと同じにならないようにしたりしています。ですので、「猿、あまり動いてないな」とお感じになってもご容赦ください(笑)。また、あまり面白い動きになりすぎないようには注意してます。
関係あるかは分かりませんが稽古の前日に上野動物園に猿の動きの観察に行きまして、動きが少なかったのと、思った以上に動きや仕草が人間に近くて、人間は猿から進化しただけのことはあるなと思いました。
ー動きを新たに作られた、師匠である吉田玉也さんからはどんなアドバイスがありましたか?
玉彦:猿に限らず動物はお客様の笑いを誘い易いので、調子に乗ってどんどん不必要なことまでやり出してしまうから気をつけるように、と言われました。
また、なぜ楊枝屋に猿なのかというと、(威嚇するときなどに見える)歯がきれいなので、それにあやかるために楊枝屋に猿がいるんだ、とも教えてもらいました。*
ーお客様に一言お願いします。
玉彦:シリアスな場面が続く中で、一服の清涼剤のような笑いの起こる、『ひらかな盛衰記』でも珍しい場ですので、箸休めのような感覚で力を抜いてご覧いただけると、猿を遣っている身としても楽しく舞台に臨めます。
*元禄3年(1690)に出版された職業図鑑ともいえる『人倫訓蒙図彙』にも、以下のような絵が「猿ハ歯志ろきゆへに楊枝の看板たり」という言葉とともに掲載されています。
楊枝師
『人倫訓蒙図彙』(部分)
国立国会図書館(https://dl.ndl.go.jp/pid/2592443)を加工して作成
5月文楽公演は27日(月)まで!
チケット好評販売中
国立劇場チケットセンターはこちら
※残席がある場合のみ、シアター1010にて当日券の販売も行っています。
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