芸術文化振興基金助成事業令和4年度助成事業事例集
特定非営利活動法人 東京ジュニアオーケストラソサエティ(助成金額:1,000千円)
練習の様子 (国立オリンピック記念青少年総合センター)
小学生から大学生までを対象に、芸術監督である篠崎史紀(NHK交響楽団特別コンサートマスター)が掲げる「インタープレイ=合奏協調精神」を青少年に育むべく、1996年よりオーケストレーションによる音楽活動を続けています。助成対象の演奏会である第22回定期演奏会は、結成25周年を記念する演奏会として指揮に当団デビューコンサート以来ご指導いただくことの多い広上淳一氏を迎え、25年間の団の成長を披露しました。
25周年記念第22回定期演奏会(東京文化会館)
25周年記念第22回定期演奏会(東京文化会館)
当団の趣旨を貫き純粋に子供たちを主体とした音楽活動を続けるために、特定の自治体や企業に依拠することをしない当団にとって、資金面での安定がまず大きな課題です。指導講師や運営スタッフを中心に団員保護者や卒団生ら、全員のボランティア精神と個々の支援者からの寄付金によって、運営を続けていますが、この数年は諸般の値上げによりさらに厳しさを増しています。支出の節約により音楽的な可能性の追求が制限されることをできる限り避けるため、今回の助成を乞うものです。また、大編成での音楽練習を可能とする施設は多くなく、練習場の確保には常に苦慮しています。
練習会場、借用楽器、指導講師、現在国内で望みうる最高の指揮者と、貴振興会の助成対象に採択されたことにより最高の環境で演奏会を迎えることができました。また、日本芸術文化振興会の助成事業であるということこそが、すぐれた活動であることの証左ともなっているように思われ、今後の活動への意欲にもつながっています。ひとときの音楽時間を仲間や聴衆と共有するために多くの困難を乗り越えなければ、演奏会の開催には到達できません。コツコツ練習を重ね、仲間と関わり、音楽の与える喜びを味わう実体験は、参加する団員たちにとって、何事も効率重視の昨今に他では得難い財産となることと考えます。クラシック音楽、特にオーケストラのような大きなアンサンブルにおいて、目指す音楽の理想を実現するためには膨大な時間と手間が必要です。長い時間をかけて奏者自身が演奏技術を習得し表現力を磨くこと、演奏に参加する者同士が理解しあい呼吸を合わせること、それらを繊細かつ大きな視点でまとめることのできる導き手、聴衆と共有するのにふさわしい空間、どれも欠くことのできない要素です。一朝一夕には手にすることができないこれら多くの事象が融合した生の演奏は、聴衆の皆様に衝撃を与え、その会場の反響がさらに奏者にとって大きな感動体験となります。私達は、あらゆるものを遠ざけたコロナ禍の数年を通して、湧き上がるように心が動くこともなく生活を送るのはとても苦しいことであると思い知りました。私達の活動は、文化・芸術のほんの一端ではありますが、それを希求する若い世代のこれからに大きな力となってくれるものだと確信しています。
毎年定例の2回の演奏会をさらに充実したものとし、コロナの感染状況に鑑みつつ、感染前におこなっていたような高齢者施設や医療施設でのミニコンサートの開催など、社会貢献活動も徐々に再開していくことを目指しています。
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