芸術文化振興基金助成事業令和4年度助成事業事例集
河原町通り無電柱化完成記念・鉾復活実行委員会(助成金額:1,000千円)
左:鉾を建てた鳳凰山(左)と三笠山、右:2基の鉾山が河原町通りを巡行
≪1≫経 緯:
丹波篠山市には、例年10月、町の中心街を9基の鉾山などが巡行する「篠山春日神社秋祭」があります。市の無形民俗文化財に指定されているこの鉾山巡行は、寛文3年(1663)に始まったとされ、当時は各鉾山の屋根の上に、それぞれ特徴のある「鉾」が乗っていました。
それが、明治43年(1910)、電気開通に伴う道路上の電線設置により、鉾は電線の障害となったため、鉾を建てた巡行は終わりを告げました。
鉾山のシンボルを失った当時の祭りの関係者や地域の人々の落胆はかなりのものだったと推察されます。
令和3年(2021)、鉾山巡行路の一部である河原町通り約600メートルの無電柱化事業が完成し、110年振りに道路上の電線がすべて撤去されました。
この河原町通りには、鳳凰山・三笠山の2基の鉾山があることから、鉾復活の声が上がり、地元の3自治会と篠山春日秋祭保存会、篠山まちなみ保存会など関係団体で「鉾復活実行委員会」を立ち上げ、伝統行事の完全な復活を目指すことにしました。
私たちは、この事業を持続可能な秋祭の再構築の一環として捉え準備を進めましたが、110年の空白はあまりに長く、鉾先の「鳳凰」や「三つの笠」など部品の修復や更新、そして、歴史的文化財としての保全や鉾建て巡行の安全確保など難題にも直面しました。また、修復には多くの時間がかかったため、令和4年(2022)10月の秋祭には間に合わず、令和5年(2023)3月19日をこの復活事業お披露目の日としました。
≪2≫活動内容:
左:岩絵の具を使用した鳳凰・顔の修復、中:修復前の鉾頭「鳳凰」、右:修復後の鉾頭「鳳凰」
《助成申請理由》:
屋根の上に建てる「鉾」は、鉾頭、しゃぐま垂れ、あみ隠し、あみ、真木などで構成されています。そして、現存する構成部品は、110年間、本来の使用は出来ず、年一回の祭りの際、町の公民館に飾り付けていました。その間に劣化・破損が進み、更新または修復に必要な費用が二百数十万円に上ったことから助成金等の支援を仰ぐ必要がありました。
約10年前、今回とは別の「アマチュア等の文化団体活動」で助成を受けた経験があったことから貴振興会に応募しました。
《達成できたこと》:
助成を受けたことにより、文化財としての価値を損なわずに必要な鉾構成部品の修繕・修復ができました。特に、鳳凰山の鉾頭「鳳凰」の顔部分の彩色に関しては、修復業者を通じ、「国立民俗博物館」の協力を仰ぐ事ができ、マイクロスコープやX線などを用い、分析を行って頂きました。これにより、2層の下地と朱、緑青、群青などの岩絵具による色付けなどが判明し、適切な修復が進められました。
《将来の展望》:
毎年の秋祭りには、無電柱化された通りを鉾を建てて巡行し、伝統を復活させます。
秋祭りの鉾山は全部で9基あり、先行する2基の鉾復活巡行が、将来は9基そろっての鉾の競演につながるよう務めていきたいと思っています。
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