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助成事業事例

芸術文化振興基金助成事業令和4年度助成事業事例集

ギャラリーリニューアル記念展「越境ー収蔵作品とゲストアーティストがひらく視座」

学校法人 京都精華大学(京都精華大学ギャラリーTerra-S)(助成金額:1,000千円)

「越境ー収蔵作品とゲストアーティストがひらく視座」展示風景 撮影:表恒匡

活動概要

「京都精華大学ギャラリーTerra-S」は、京都精華大学が運営するギャラリーとして2022年2月に開館しました。ギャラリーでは大学が主催する企画展、在学生や卒業生、教職員自身がディレクターとなって自らの学修成果・研究成果を発表する申請展、本学所蔵の収蔵品を活用する展覧会などを開催し、学内のみならず広く社会へと発信しています。また、ギャラリー内あるいはすぐ外に隣接するアクティビティコモンズ等を用いて、ワークショップや講座などの展覧会と連動したイベントや、展示に関するラーニングプログラムも展開しています。

このたび助成を受けた展覧会「京都精華大学ギャラリーリニューアル記念展『越境ー収蔵作品とゲストアーティストがひらく視座』」は、ギャラリーTerra-Sの初の自主企画展として、既存のジャンルや制度、価値観における「越境」をテーマとし、「ジェンダー/歴史」「身体/アイデンティティ」「土地/記憶」などのキーワードを参照しながら、11名のアーティストの作品の展観を試みました。

本展では、本学が収蔵するシュウゾウ・アヅチ・ガリバー、今井憲一、ローリー・トビー・エディソン、塩田千春、嶋田美子、富山妙子の作品に加え、2000年代以降に活動を開始した5名のゲストアーティストーいちむらみさこ、下道基行、谷澤紗和子、津村侑希、潘逸舟ーの作品を紹介しました。出身や世代、表現手法は多様ですが、個人と社会、自己と他者、想像と現実、ジェンダーなどにおける固定的な輪郭をしなやかかつ鋭く揺さぶる11名の表現者が織りなす本展が、私たちのこれからを予感させる複数のしらべが響く場所となること、そしてその響きが多くの方に届くことを願い開催しました。

助成を受けて

リニューアル後、ギャラリーにとって初めての企画展ということもあって、今までの企画展の予算規模や運営体制で充実した展覧会が実施できるか大きな不安がありました。また、しばらく大学として収蔵作品の展示を行っていなかったため、収蔵作品の扱いに詳しいスタッフがおらず、ここ数年の企画展の展示作業は美術品専門の展示業者が行うのではなく、出展作家本人やフリーランスのインストーラーに依頼して進めていくケースが多かったため、限られた予算のなかから実際に収蔵作品の展示ができるのかという懸念もありました。安全に作品の輸送や展示作業を行うためのご支援をいただけたらと思い、助成を申請いたしました。

助成の意義

助成を受けたことにより、主に収蔵作品の展示を充実させることができました。本学のシュウゾウ・アツヂ ・ガリバーの収蔵作品は、《重量(人間ボール)》の一点のみですが、より作品のコンセプトを展示において伝わりやすくするため、作家ご本人より本作のコンセプトドローイングを2点借用しました。また、作家をオープニングトークに招聘し、観客の前でお話いただく機会を設けることができました。今井憲一のスケッチブック「残像No.2」の展示では、一冊のスケッチブックに綴られたドローイング17点を115%拡大してジークレー印刷を行い、画面に描かれた文章やモチーフを1点づつ鑑賞可能にしました。また、本学では収蔵作品の展示や輸送を8年近く行っておらず、収蔵作品の展示に詳しいスタッフが不在の状態ですが、過去に本学で収蔵作品の展示を担当していた美術品展示業者に依頼することができ、適切に作品の輸送、展示設営、撤去を行うことができました。

来場者からのアンケートでは、本学の多様な収蔵作品の存在に驚かれたコメントが多く、今回のような収蔵作品を現代的な切り口で紹介する展覧会を引き続き見たいという声を多数いただきました。

大学ギャラリーの活動として、在学生、教職員への展示の機会を提供する場所というイメージを持たれやすく、その役割ももちろん重要ですが、本展のように大学の収蔵作品を活用して、現代アーティストと共に現代的な切り口で紹介すること、それぞれを組み合わせることによって新しい関係性や価値観を社会へ提示していくことも大学ギャラリーの重要な活動の一つであると感じています。

今後の活動

開館2年目に入り、まだまだギャラリーの運営面は手探りなことが多いですが、引き続き、企画展や申請展をバランスよく実施していくこと、さらには大人向けやこども向けのワークショップ、ギャラリーツアーなどの様々なラーニングプログラムも定期的に実施していけたらと思います。

ギャラリーの活動を積極的に社会に発信していくことをとおして、ギャラリーの存在をより多くの方に知っていただき、京都を中心に国内外のアートシーンにおけるギャラリーの存在感もあげていきたいと考えています。

学校法人 京都精華大学(京都精華大学ギャラリーTerra-S)