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助成事業事例

芸術文化振興基金助成事業令和4年度助成事業事例集

東京現音計画 #17、#18

東京現音計画(助成金額:1,000千円)

「東京現音計画#17~ミュージシャンズセレクション6:神田佳子『シュトックハウゼンー雷電』〜江戸現音計画化」
2022年7月7日(木)杉並公会堂小ホール
撮影:松蔭浩之

活動概要

現代音楽の第一線で活動する演奏家により2012年に結成された東京現音計画は、一定の視座からの演奏会プログラミングを通じて、日本の現代音楽の諸状況に演奏家の立場から一石を投じる活動を続けています。5人の設立メンバー(有馬純寿(electronics)、大石将紀(saxophone)、神田佳子(perc.)、黒田亜樹(p)、橋本晋哉(tuba))を擁し、2022年に結成10周年を迎えました。主催公演では、作曲家にプログラム監修を依頼するコンポーザーズセレクション、メンバーがプログラミングを担うミュージシャンズセレクションを2つの柱に、レパートリーの再演を行うベストセレクション、批評家にプログラム監修を託すクリティックズセレクションなどのシリーズを、年に2回のペースで展開してきました。

米欧を中心とする現代音楽の世界的な潮流からの「時差」をなくし、最先端の音楽作品の日本初演を数多く行う一方、ユニークな編成を活かした新作委嘱で世界に発信を行う活動は、その第1回目の定期公演がサントリー芸術財団佐治敬三賞を受賞するなど、早くから注目されてきました。特に、国際的に活動するメンバー個々のネットワークを活かした企画の先鋭さと、高い演奏テクニックと一筋縄ではいかないエンターテインメント性が共存する個性的なステージングで、現代日本のクラシック・現代音楽界で独特の存在感を放っています。

団体結成10年目の節目となった2022年度に助成を受けた活動「#17、#18」は、第17回、第18回にあたる主催公演として、#17ではメンバーの神田佳子が、#18ではゲストとして気鋭の音楽学者・中井悠氏がプログラム監修を担当しました。

東京現音計画#17~ミュージシャンズセレクション6:神田佳子『シュトックハウゼンー雷電』〜江戸現音計画化」
2022年7月7日(木)杉並公会堂小ホール
撮影:松蔭浩之

「東京現音計画#18〜クリティックズセレクション2:中井悠〜ZOOMUSIC」
2022年12月19日(月)杉並公会堂小ホール
撮影:松蔭浩之

助成を受けて

現在では、特に東京などの大都市では現代音楽のグループ/アンサンブルも増えていますが、発足当時は新しい現代音楽グループの結成はまだ珍しく、メンバー各々の力を総動員して集客にあたり、知名度をあげてきた努力の積み重ねのうえに現在の活動があります。とはいえ、そもそもチケット収入だけでは成立し得ないジャンルであり、助成金の獲得は団体として必須です。振興会の助成を受けることは結成の準備段階から目標のひとつとなっており、結成して2年目以降、早い時期からほぼ一定して助成をいただいていることは、活動の基盤を安定させる上で大変役立っております。

助成の意義

エンターテインメント事業ではない芸術的な舞台公演で、チケット販売だけで成立できているものは、どんなジャンルにもほとんどありません。助成金など公的資金を受けているか、あるいは個人/グループが赤字分を負担することでかろうじて公演が成り立っています。当団体のような小ホール規模での公演でもチケット収入の約5倍の資金が必要で、これを個人の懐に頼るのは継続的な活動のうえで限界があることは自明です。「助成を受けたおかげで達成できた」という発想よりも、助成なしでは文化芸術は社会に存在できないこと、また芸術とは社会が育み、新たな創造の場を与えていくものであるとの認識を、主催する側、また助成する側の双方が共有することが重要と思います。

一方で、「社会の公益性」だけを考慮していくと、アーティスト個人が産み出している「面白い」才能はどんどんこぼれ落ちていきます。米欧では公的な助成機関に設置されたディレクターが、そうした個人を積極的に発掘していくことも重要な役割であり、ディレクター自身のキャリアとして評価されることも多いです。こうした「目」をもった専門家が助成機関に増え、また適正に評価されていくことを期待します。

今後の活動

「#18」公演では、米ヴァージニア大学大学院とのコラボレーションを行い、また全世界に向けて作品公募を行うなど、より直接的な海外との交流を進めることができました。コロナ禍で進んだネット環境での協働作業のノウハウを活かしながら、より活発な国際的な活動の展開を図りたいと思います。

また、従来から行なっている演奏家の立場から行う作曲ワークショップや、エレクトロニクスや拡張技法の演奏ワークショップなど、後進の育成にもより力を入れていきます。

東京現音計画