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助成事業事例

文化芸術振興費補助金助成事業令和3年度助成事業事例集

“「観る」「知る」「学ぶ」そして「繋がる」50年へ”行動計画

公益財団法人兵庫県芸術文化協会(兵庫県立尼崎青少年創造劇場(ピッコロシアター))
(助成金額:45,832千円)

ピッコロ劇団第71回公演 「いらないものだけ手に入る」(10月)
令和3年度文化庁芸術祭賞「大賞」受賞
撮影:堀川高志

活動概要

兵庫県立尼崎青少年創造劇場(ピッコロシアター)では、劇場・音楽堂等機能強化総合支援事業の助成を活用し、《劇場・劇団・学校》を持つ強みを活かし、①創造発信②交流連携③人材育成④地域創生の4つのミッションをプラスの循環で繋げ、「地域が芸術文化でつながり、誰もが生きやすい社会」をつくることを目指して多彩な事業を展開しています。

専属の「ピッコロ劇団」では、質の高い舞台芸術の創造と鑑賞機会を提供するため、年間3回の本公演や家族向けの「ファミリー劇場」の上演のほか、県内中学生が本格的な演劇舞台を鑑賞体験する「わくわくステージ」や小学校に出向く「おでかけステージ」などを実施しています。

また、第一線で活躍する演劇人や舞台技術者から本物の劇場の設備を使って学べる「ピッコロ演劇学校・舞台技術学校」を運営し人材育成に取り組んでいます。これまでに約2800人の卒業生を輩出し、舞台芸術のプロとして劇団や舞台関連会社で働く者、地域の文化施設や学校現場で演劇を活かした教育活動に携わる者など、地域文化の担い手として活躍しています。

助成を受けて

令和3年度においても、令和2年度に引き続き、新型コロナウイルス感染拡大により、事業中止や席数制限、参加者の減少など影響を大きく受けました。こうした中で、当劇場では、助成を受けることにより、「コロナ禍でも感染対策に万全を期しながら、できるだけ生の舞台芸術を継続して届ける」との方針のもと、安定した事業展開を行うことができました。令和2年度に中止となったオフシアター「もういちど、鴨を撃ちに」、第67回公演「スカパンの悪だくみ」を上演することができたほか、乳幼児向けの「シアタースタート」では観客との接触が多い演目の取り止め、また「ファミリー劇場」ではオーディションによる子ども出演を取り止めて上演。第72回公演「脚気にしやがれ!~近代日本最悪の病「脚気」奮闘記~」では、公演直前に出演者の新型コロナ感染症に伴う降板があったものの、急遽脚本修正と代役を2人で務めるなどして上演。お陰様で、令和3年度の大半の事業を予定通り実施することができました。

助成の意義

助成を受けることにより、自主財源だけでは難しい質の高い舞台芸術の創造や人材育成事業等を5年間という長期のスパンで安定的に実施することができるとともに、社会包摂の観点からバリアフリー事業にも積極的に取り組むことができました。

昨年10月の第71回公演では、土田英生氏(劇団MONO)がピッコロ劇団と19年ぶりのタッグのもと、作・演出を手掛けた異星のロミオとジュリエット「いらないものだけ手に入る」の上演により、令和3年度文化庁芸術祭演劇部門・関西参加公演の部において、劇団初の「大賞」を受賞しました。

人材育成では、助成金のお陰で、ピッコロ演劇学校・舞台技術学校において、芸術創造に携わることを目指す若者に安価でハイレベルな授業を提供することができました。

また、障害のある方への鑑賞サポートに積極的に取組み、視覚に障害のある方への「音声ガイド付き公演」、聴覚に障害のある方への「字幕付き公演」を実施しました。鑑賞サポートにより、中学生を対象とした「わくわくステージ」に、特別支援学校の生徒が継続して参加しています。音声ガイドや字幕は公演内容を熟知したピッコロ劇団員が作成し、わかりやすいと利用者から高い評価を受けました。

さらに、生の舞台に接する機会の少ない地域の小学生に向けた「おでかけステージ」や演劇ワークショップ「あつまれ!ピッコロひろば」なども開催しました。

このように、助成は、質の高い舞台芸術の創造に加え、障害の有無や居住地域などに関わらず質の高い芸術体験・鑑賞機会を提供することや地域文化を担う人材育成の大きな力となっています。

中学生のための演劇鑑賞体験事業
ピッコロわくわくステージ「グリム兄弟!~みんなのメルヘン きかせてダンケ~」(11月)
※両サイドに“字幕表示”公演(11/25 GP)
撮影:森口ミツル

令和4年3月 ピッコロ演劇学校(本科)・ピッコロ舞台技術学校 合同卒業公演
「ねこになった漱石」

今後の活動

当劇場では、今後とも、《劇場・劇団・学校》を持つ強みを活かし、助成金を活用し、地域に根ざした質の高い舞台芸術の創造、鑑賞機会の提供、人材育成を通じて、演劇文化の裾野の拡大や演劇を通じた社会包摂活動などに積極的に取り組んでいきます。

昭和53年にオープンし、44年が経過した当劇場は、「観る」「知る」「学ぶ」そして「繋がる」50年へ向けて、さらに歩みを進めてまいりたいと考えています。

公益財団法人兵庫県芸術文化協会(兵庫県立尼崎青少年創造劇場(ピッコロシアター))