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くろごちゃんが解説! 『彦山権現誓助剣』の魅力

 国立劇場5月文楽公演の第二部は『彦山権現誓助剣』を上演します。
 養父を殺され敵(かたき)を捜し求める女剣士・お園。その敵で強悪な剣士・京極内匠。互いに出生の秘密を持つ二人の因縁と、お園の助太刀となる豪傑・毛谷村六助との巡り逢いを描く仇討物で、18年ぶりの半通し上演です。
 冷酷無比かつ悪の限りを尽くす京極内匠に大力無双のヒロイン・お園が挑むというストーリー、瓢簞棚という特異な場面で起こる怪奇と緊迫感のある立廻りなど見どころが盛り沢山です。今回はくろごちゃんが「瓢簞棚の段」を中心に『彦山権現誓助剣』の魅力をお伝えします。


◆◆◆


付き人:くろごちゃん、なに読んでるの?

(⌒v⌒):『彦山権現誓助剣(ひこさんごんげんちかいのすけだち)』(以下『彦山』)のあらすじだよ。

付き人:もうすぐ始まる5月文楽公演で上演されるんだよね。「杉坂墓所(すぎさかはかしょ)」と「毛谷村六助住家(けやむらろくすけすみか)」(以下「毛谷村」)は前に観たなぁ。毛谷村六助は見ず知らずの人から幼い子供を託されるんだよね。その後、旅の老婆が親子になれって言ってきたり、虚無僧姿の女が訪ねてきたり……だっけ?



『彦山権現誓助剣』

(⌒v⌒):うんうん!

付き人:で、実は、その虚無僧の女は養父の敵を追うお園(その)で、二人は許婚の間柄だったのが分かるんだよね。老婆はお園の母親であるお幸(こう)、子供はお園の妹お菊(きく)の子供の弥三松(やそまつ)だった。

(⌒v⌒):おお、付き人さんにしてはよく覚えてるね! それでそれで?

付き人:(なんか今、すごーく失礼なことを言われた気がする……)えっと、お園の話で六助は、お園の養父で剣術の師匠の吉岡一味斎(よしおかいちみさい)が暗殺されたこと、その敵が自分をだました微塵弾正(みじんだんじょう)実は京極内匠(きょうごくたくみ)だったことを知る。そして、お園に敵討ちの助太刀を約束する。

(⌒v⌒):すごいすごい! 今回はその「毛谷村」の前に「須磨浦(すまのうら)」と「瓢簞棚(ひょうたんだな)」がついての上演で、このような形の半通し上演はなんと18年ぶりなんだよ!

付き人:そうなんだ~。(あらすじを読みながら)ほうほう、二手に分かれて敵討ちに出た姉妹だけど、妹のお菊は「須磨浦」で京極内匠の返り討ちにあうんだね、内匠って酷い奴だなぁ。それで「瓢簞棚」は……、ねえねえ、くろごちゃん。次々に不思議なことが起こってて、展開についていけないんだけど……。

(⌒v⌒):う~ん、たしかにこのあらすじだけだと分かりにくいかも……。でも、「瓢簞棚」で起こっていることが分かると、『彦山』がもっと楽しくなるんだ! ぼくが「瓢簞棚」のストーリーを解説するね。


◆◆◆


付き人:まず質問! 「瓢簞棚」の舞台は山城国小栗栖(やましろのくにおぐるす、現在の京都市伏見区)ということだけど、どうして小栗栖というところなの?

(⌒v⌒):おっ、良い質問ですね、付き人さん! 歴史好きの人なら知っているかも知れないけど、実は小栗栖という地は、先日2020年の大河ドラマの主人公に決定した明智光秀が最期を迎えたところなんだよ。

付き人:へえ、そうなんだ~。ぼくは知らなかったよ。

(⌒v⌒):……だろうね。




Point!
本能寺の変のあと、山崎の戦いに敗れた戦国武将・明智光秀は、小栗栖で百姓に竹槍で刺されて深手を負い、自害したと言われています。ちなみに、光秀を主人公にした別の作品『絵本太功記(えほんたいこうき)』「尼ヶ崎(あまがさき)の段」では、段切で「たちまち廻(めぐ)り小栗栖の、土に哀れを残すとは知らず知られぬ敵味方」と語られます。





付き人:小栗栖が明智光秀の最期の地なのは分かったけど、それが『彦山』となにか関係あるの?

(⌒v⌒):京極内匠は、実は明智光秀の遺児だったんだ。京極内匠は実父・明智光秀の最期の地・小栗栖でなんとその亡霊に出会い、自分が光秀の遺児であることを自覚するんだ。それが描かれているのが「瓢簞棚」なんだよ!

付き人:そっか! だから小栗栖が舞台なんだね!! (あらすじを読みながら)それで、小栗栖でお園は従者の友平と出会って、託された敵の手がかりの守り袋を池に投げ込むと、お園が持っていた千鳥の香炉(ちどりのこうろ)が音を発する……、「香炉が音を発する」……?

(⌒v⌒;):付き人さん! 頭から湯気出てるけど……大丈夫?

付き人:この「千鳥の香炉」ってなに? なんで鳴るの?

(⌒v⌒):「千鳥の香炉」っていうのは真柴久吉、羽柴(豊臣)秀吉のことだけど、その久吉が持っていたとされる名器なんだ。




Point!
愛知県名古屋市にある徳川美術館に収蔵されている「青磁香炉 銘 千鳥」は、砧青磁の香炉で、豊臣秀吉が所持したと伝えられています。盗賊・石川五右衛門が秀吉の寝所に忍び込んだ際、枕元に置いていた香炉の蓋の千鳥が鳴いたため、五右衛門は捕まったという伝説があります。





付き人:あ、元々、鳴くものなんだ……。そして久吉にゆかりのあるアイテムなんだね。

(⌒v⌒):お園は実は吉岡一味斎の実子じゃなくて、赤ちゃんの頃に拾われた子で、拾われた時にかたわらに添えられていたのが「千鳥の香炉」なんだ。そのことが、今回は上演されないんだけど、五段目の「一味斎屋敷」で、母のお幸によって語られるんだ。

付き人:じゃあ、お園は久吉にゆかりのある血筋ってこと?

(⌒v⌒):そうそう、ここ以外にはっきりと語られる部分はないけどね。久吉にゆかりのあるお園と、明智光秀の遺児である内匠。二人は生まれながらにして因縁があったんだ。




瓢簞棚の段(平成30年4月国立文楽劇場公演より) 



付き人:ふんふん。それでちょうどその時、光秀の亡霊に呼ばれた博徒の銅八(どうはち)、実は京極内匠は、小田(織田)家の名刀蛙丸(かわずまる)を手に入れる。……また不思議なアイテムが出てきた。

(⌒v⌒):光秀は本能寺の変の後、蛙丸を持ち出していたんだね。

付き人:いやいや、そうじゃなくて! どうして蛙(カエル)?

(⌒v⌒):「小田」、つまり「田んぼ」と「蛙」は縁のある言葉なんだ。

付き人:ふうん。

(⌒v⌒;):(反応うすっ……!?) 『絵本太功記』「尼ヶ崎の段」でも「小田の蛙の啼(な)く音(ね)をば、留めて敵に悟られじと、差し足抜き足、窺ひ寄り」ってあるよね。

付き人:あ、光秀が登場する場面だ! でも、それがどうして小田家の重宝なの?

(⌒v⌒):織田信長は作中では「小田春永」、だから小田家の重宝・蛙丸。『彦山』より前に作られた作品でも出てくるんだよ。もちろん、史実じゃないけど。

付き人:へえ、そうなんだ。それが分かると面白いね。そういえば、『絵本太功記』「尼ケ崎の段」の前は「夕顔棚の段」だよね。そして、今回は「瓢簞棚」。これにはなにか意味はあるの?

(⌒v⌒):「太閤記」を描いた浄瑠璃作品には、真柴久吉の馬印を千成瓢簞(せんなりびょうたん)とするものが多いんだ。夕顔の果実が瓢簞だからね、実は同じ植物がモチーフになっているって言えるよ。ちなみに「瓢簞棚」のラストでは、内匠が瓢簞を馬印に見立てて切る場面があるんだ。

付き人:なるほど! 小栗栖の瓢簞棚が舞台になっていることにも、ちゃんと意味があるんだね。それで、「瓢簞棚」については分かったけど、『彦山』のお話全体にはどう関わってくるのかな?

(⌒v⌒):付き人さんは「毛谷村」を観てるんだよね。京極内匠は微塵弾正と名乗って出てくるでしょ。

付き人:そうそう。嘘ついて六助に試合にわざと負けてもらって、立浪家に仕官する!

(⌒v⌒):良く覚えてました! 京極内匠が偽名を名乗り汚い手を使ってまで立浪家に仕官するのは、父を死に追いやった久吉に近寄って仇を討つため。そして、お園にとって養父の敵・内匠を討つことは、結果的に自分にゆかりのある久吉の命を救うことになるんだ。

付き人:わ! すごい! 「毛谷村」だけだと気付かない伏線だ!

(⌒v⌒):実は「太閤記」の世界を背景に持ったスケールの大きな作品である『彦山』。その魅力が、「瓢簞棚」にはいっぱい詰まっているよ。ぜひ劇場で楽しんでね。

◆◆◆


(⌒v⌒):瓢簞棚での立廻りは、舞台機構も駆使していて、見ごたえたっぷり! 特設サイトでは、この立廻りをばっちり紹介した予告編動画も公開中だよ。

付き人えー、見逃していた! 早速見なきゃ!! (スマートフォンを取り出して予告編動画を見る。)わっ! 痛快アクション時代劇みたい! ……あっ! 内匠が瓢簞棚から飛び降りた!

(⌒v⌒):重い人形をもって、主遣いと足遣いの二人で飛び降りるんだ。それだけで凄い迫力だよ! 特設サイトには他にもお園を遣う吉田和生さんのインタビュー動画も公開しているよ。

付き人:がぜん『彦山』が気になってきたー!

~特設サイトを夢中で見ながら、5月文楽公演の初日を心待ちにする二人でした~

5月文楽公演は、12日(土)から28日(月)まで
第一部:午前11時開演/第二部:午後4時開演

好評販売中!
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公演詳細は↓↓↓   

 

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