歌舞伎公演ニュース

2017年11月10日

中村吉右衛門ら出演者が12月歌舞伎公演への
意気込みを語りました

  12月歌舞伎公演は、古風で華やかな長唄舞踊『今様三番三(いまようさんばそう)』と、義理に厚い俠客〈梅の由兵衛〉の活躍と苦衷を描いた『通し狂言 隅田春妓女容性(すだのはるげいしゃかたぎ)―御存梅の由兵衛(ごぞんじうめのよしべえ)―』を上演します。
 10月26日の取材会で、中村吉右衛門、中村東蔵、中村歌六、中村雀右衛門、中村又五郎、中村錦之助、尾上菊之助が公演への意気込みを語りました。



(左より)尾上菊之助、中村又五郎、中村歌六、中村吉右衛門、中村東蔵、中村雀右衛門、中村錦之助

  

中村吉右衛門
(『隅田春妓女容性』梅の由兵衛) 


 『隅田春妓女容性』の梅の由兵衛を初役で勤めます。梅の由兵衛は初代吉右衛門が当てた役で、副題は「御存梅の由兵衛」となっていますが、皆さんも本当に「ご存じ」のお芝居でした。初代が最後に勤めたのは約70年前(昭和23年1月、帝国劇場)、実父の白鸚が勤めた時(昭和29年6月、御園座)から約60年経っており、私も舞台はあまり憶えていないのですが、当時、「梅由」と言えば吉右衛門、吉右衛門と言えば「梅由」というくらい初代が当てた役なので、当然私もやらなくてはならない、と考えていました。今回、私なりの由兵衛像を創り上げたいです。
 梅の由兵衛は江戸の男伊達(俠客)で、強きをくじき弱きを助け、信義に厚く、そのためには命も惜しまないような人です。俠客の基はいわゆる「傾(かぶ)き者」で、彼らがだんだん俠客になっていくらしいのですが、私も「傾き(歌舞伎)者」でして、そこが由兵衛と私の共通点だと思います(笑)。見どころの中心となる「長吉殺し」は凄惨な場面ですが、殺しの中にも美しさや哀れさが感じられて、由兵衛にも同情してもらえるように演じたいです。
 久しぶりの上演ですが、この作品を「通し」で上演すれば、お客様により理解していただけるはずです。実父の白鸚が残した談話に、「並木五瓶さんは上方から江戸に出てきた方で、また、吉右衛門も先祖が上方、江戸(東京)で生まれ育った人ですので、上方と江戸両方の血を受けた初代がこの由兵衛をやるのはまったく相応しい、何もしなくても由兵衛が両方の味を持ち合わせた人間に創り上げられ、江戸と上方の“におい”のする芝居になっている」とあります。さて、自分を振り返ってみますと、私は東京で生まれ育っておりますので、上方の味というのはなかなか難しいのですが、先人の(三代目市川)寿海のおじさん、(二代目中村)鴈治郎のおじさん、(十三代目片岡)仁左衛門のおじさん、(三代目實川)延若のお兄さん、そういう方たちを思い浮かべて、上方の感じをうまく取り入れたいです。
 

  

中村東蔵
(『隅田春妓女容性』信楽勘十郎) 
 

  信楽勘十郎は、いわゆる捌き役、“ジョーカー”みたいな役で、困った時に出てくるような、非常に良い役を勤めさせていただきます。六代目尾上菊五郎さんや、八代目市川団蔵さんなど、多くの方が演じていますが、私が団蔵のおじさんに抱いているイメージ等を活かして役に近づいていけばよいのか、別のやり方もないかと、模索している最中です。吉右衛門さんは、ご自身が初役なので「どなたも御存じない梅の由兵衛」と仰いましたが、この上演を機会に、皆さんが「御存じ」になるような良い芝居にしたいです。
 

  

中村歌六
(『隅田春妓女容性』源兵衛堀の源兵衛) 
 

  源兵衛堀の源兵衛という、悪者チームの一番の「悪いやつ」をやらせていただきます。小梅に横恋慕したり、お金を騙し取ったり、本当に悪いやつです。それでも、たまに、「良い人」のような顔をする時があるんですよ。お金を貸してあげたりして……もちろん騙しているんですけどね。それで「上手く騙せた!」というところが表現できたら、お芝居が面白くなると思っています。


  

中村雀右衛門
(『今様三番三』曽我二の宮実ハ如月姫、『隅田春妓女容性』額の小三) 
 

  父が昭和50年(12月、南座)に演じた『今様三番三』の如月姫を、今回勤めることになりました。父に負けぬよう、そして、皆さんに喜んでいただけるよう、精一杯舞台を勤めたいと思います。「晒(さらし)三番叟」とも呼ばれているように、源氏の白旗を晒に見立てて、しかもお姫様のなりで舞台の上で振るというところが、大変難しい役どころです。立派に振れるようにしっかりと勤めたいと思っています。また、『隅田春妓女容性』の額の小三では、由兵衛さんに色々とご迷惑をかけ、やっと請け出されて……という役ですが、それに見合うように勤めたいです。 


  

中村又五郎
(『隅田春妓女容性』土手のどび六実ハ十平次) 
 

  吉右衛門のお兄さんからは、「梅の由兵衛というのは、初代吉右衛門が評判をとった芝居だ」というお話を、かねがね伺っておりましたので、今回、お兄さんの許でこの作品に参加させていただくことを、本当に嬉しく思っております。どび六は、兄・歌六が演じる源兵衛のような大きな悪者ではなくて、本当に小さな悪者です。それでいてすごく間抜けで……そういう小悪党の雰囲気を出したいと思っています。前回(昭和53年9月、国立劇場)は兄・歌六も勤め、その以前は十七代目中村勘三郎のおじも勤めています。近付くことは難しいかもしれませんが、勘三郎のおじのイメージを頭に描きながら、勤めたいです。
 

  

中村錦之助
(『隅田春妓女容性』金谷金五郎) 
 

  最近、雀右衛門のお兄さんの相手役を勤めさせていただく機会に恵まれていますが、お客様に「どれも同じじゃないか」と言われないように、また、「今回の金五郎は、前の二枚目とは全然違った味だね」と言って見ていただけるように、工夫して勤めたいです。
 参考にするものが無い役なので、台本をよく読んで、播磨屋のお兄さんと一緒に役を創り上げたいです。

 

  

尾上菊之助
(『隅田春妓女容性』由兵衛女房小梅・丁稚長吉) 
 

  由兵衛の妻・小梅は由兵衛に対する"情"、小梅の弟・長吉は姉に対する"情"、どちらもこの"情"というものを非常に大切にしなければならない二役ですので、岳父(中村吉右衛門)の胸を借りて、勤めたいです。早替りの場面もあり、お客様にどのようにお見せできるのか、工夫をしないといけないと考えています。金策に走っている由兵衛をなんとかして助けたいという小梅と、悩んでいる小梅をなんとかして助けたいという長吉の、人に対する"思い"や"情"をどれだけ深く描けるかということを念頭に勤めたいです。 

 

◆◆◆

 『今様三番三』は、天下泰平を祈る能楽の〈三番叟〉を元に作られた数ある歌舞伎の〈三番叟物〉の一つで、女方の舞踊に仕立て上げられています。「晒三番叟」とも言われ、振袖姿の三番叟と〈布晒し〉の躍動感がみどころです。四代目雀右衛門も手掛けた、曽我二の宮実ハ如月姫を当代雀右衛門が優美に舞います。
 『隅田春妓女容性』の梅の由兵衛は、大正から昭和にかけて初代吉右衛門が名演を残し、八代目幸四郎(白鸚)に引き継がれました。今回の上演にあたり、初代吉右衛門が磨き上げた台本を、原作も踏まえてさらに練り上げ〈通し狂言〉として新たに補綴し、当代吉右衛門が由兵衛に挑みます。忠義を貫き通す由兵衛の意気地と周囲の人々への情愛、そして魅力あふれる多彩な登場人物によって織り成される人間模様を、お楽しみください。

 

 

12月歌舞伎公演は、3日(日)から26日(火)まで
12時開演 但し、8(金)・15(金)は午後4時開演 
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